習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『Zアイランド』

2015-06-09 22:03:19 | 映画

品川ヒロシ監督の第4作。彼の映画は芸人の余芸ではない。エンタメの衣を纏いつつも、確かな作家としてのスタンスを持つ。北野武とは別の意味で、新しいタイプの芸人映画作家の誕生だ、と思わせる。そんな彼のこの新作は、なんとゾンビである。日本のゾンビ映画はつまらない、という通説を覆すための大胆な挑戦である。

それにしても、このリアルなゾンビたち。今までの映画はそこをおざなりにしてきた。ゾンビなんか、その他大勢でしかない、という姿勢がゾンビ映画をつまらなくしたのだ。だが、品川監督はひとりひとりのゾンビにこだわる。ゾンビだって生きているんだ、トモダチなんだ、とばかりに、個性的なゾンビを提示した。ゾンビにも人権がある、とね。(まぁ、それはちょっと言い過ぎかぁ)

ただ、限定された閉ざされた空間からどうサバイバルするか、とか、お話の展開のおもしろさとか、そういう部分はおざなりにされているから、途中から飽きてくる。あまりに単調過ぎるのだ。ゾンビが襲う、戦う、逃げる、その繰り返しばかり。お話は脱出劇にも、対決にもならない。ゾンビ側はその造形に個性があったけど、当たり前にその生きざまはただのゾンビなので退屈してくる。ふらふら歩いて(走ったりもする)人間を襲う。それだけ。

では、生きている人間の側のドラマはどうか、というと、実はそちらもあまり興味深い展開は見せないのだ。人情劇みたいなダルさもあるし。木村祐一のヤクザが過激で面白いけど、彼と哀川翔との対決にはならない。ラストでは、冒頭のリベンジがあるかと思ったのに、せっかくふたりを同じ場所に行かせたのに、ない。なんかそれってもったいない。もちろん、これはゾンビとの戦いなので、そちら方面でお話は作らなかったのだろうが、それなら、彼らが別々のルートからこの島に引き寄せられた意味がないではないか。だいたい彼らがなかなか島に行かないのも、気になった。

これまで、お話の展開のうまさで光っていた品川監督なのに、今回のお話のなさはどういうことか。いろんな意味では頑張ってはいたけど、見終えて実はかなりがっかりしたのも、事実なのだ。


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