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映画・演劇のレビュー

『楊家将 〜烈士七兄弟の伝説〜』

2014-01-22 22:53:11 | 映画
 こういう時代劇アクション映画は昔からたくさんある。日本映画の時代劇と同じで、これは中国映画の伝統だ。偉人伝とか、有名な武将の感動ストーリーをすごい予算で映画化するというパターン。でも、これはなんだか古臭いなぁ。とても現代の映画とは思えない。アプローチもそうだし、話の展開がまたそう。どうして今の時代にこういう映画が作られるのか、よくわからない。中国では有名な話なのだろうが、この映画を今見て、得るものは何もない。ジョン・ウーの『レッドクリフ』と比較するのは、お門違いかもしれないけど、でも、同じように古典を今の時代に映画化して、あれはあんなに新鮮だったのだ。どこが違うのか、ちゃんと考えて欲しい。

 作り手の意識の問題だろう。この作品だって『三国志』や『水滸伝』と同じように膨大なお話(『楊家将演義』)を原作に持ち、そこからストーリーをチョイスしたはずなのだが、あまりにそのお話の世界が狭すぎるのが問題なのだ。世界観のようなものが、ない。ここに描かれるのは、ただの、父親とか家族への忠義でしかない。それではあまりに単純すぎて、話が広がらないのだ。

 だいたい主人公は7人兄弟で、彼らのキャラクターをどう描き分けて、彼らの見せ場をどう作るのか、それがちゃんとなされてないと、話に奥行きができないのだが、それをすると、映画は長くだらだらしたものになる。でも、そこがないと、この話の存在意義はない。要は人間をどう描くのかに尽きる。1時間40分の映画でそれは不可能。だから、主人公をひとりに絞り込んで、彼の視点からだけですべてをみせるべきだった。

 だが、中途半端な妥協が命取りになる。「フレディVSジェイソン」「SPIRIT スピリット」のロニー・ユー監督なのだから、国内マーケットだけを目指した映画ではないはずなのだが、この中途半端な妥協映画は明らかに失敗している。とてもじゃないが、海外でのセールスができるような出来ではない。ここには普遍性がないからだ。家族の絆なんてものはここでは普遍性にはならない。そんな一般論ではなく、このエンタテインメント大作を、どれだけ派手で感動的なドラマとして作りあげるのかが、課題だった。そこで必要だったのが、わかりやすさなのである。でも、そんな簡単そうに見えることが、実は何より難しい。



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