コロナの影響で映画館が閉まる直前に見た1作がたまたま中田秀夫監督の最新作だった。もちろん、その瞬間はその映画が劇場で見る最後から2本目の映画になるなんて夢にも思わなかったので、ほんとうにたまたまそうなっただけだ。その後4月2日にもう一本見たが(『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』)それだってそれが最後になるなんて思いもしなかった。まぁ、今後二度と映画を映画館では見られないわけではないから、こういう書き方は大袈裟なのだけど、もう1か月以上映画館には行けてないし、今月もまだ再開されない可能性は高い。
『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』についてはすでに書いてある。実につまらなかった。あそこに書いた通りなので、繰り返さないけど、なんだか釈然としない。そこで、この映画を見ることにした。2019年作品である。これが中田秀夫の金字塔であり、最高傑作『リング』の流れを組む作品であることは明白だろう。再び〈貞子〉を彼が「今」描くのならどんな切り口をするか、実はすごく興味津々だった。だけどなんか嫌な予感がして、劇場で見るのを避けていた。やはり、思った通りの映画だった。どうしてこんなことになるのか、僕には訳が分からない。才能が枯れてしまったなんて、思いたくはない。だけど、こんなにも、無意味でつまらない映画を平然と作れるということに驚きを禁じ得ない。これこそ悪夢だ。カドカワ映画が作る『貞子』シリーズの最新作を任された彼が、それまでのただのお化け屋敷映画とは一線を画する映画を提示するのは、当然の話だろうと思った。でも、それが傑作になるとは思えなかったのも事実だ。もう貞子映画には可能性はない。では、それでも引き受けた彼の負け戦がどんなものとなるのか、目撃するのも意味がないわけではあるまいと、思った。だけど、これはあんまりだ。
まず、まるで怖くない。ホラー映画なのに、それはないだろう。しかも、貞子である必要もない。『リング』を作った男としての矜持が感じられない。苦しんだ痕跡もない。こんなつまらない台本でGOを出したのは誰だ? 制作の裏事情なんか知る由もないけど、無残だ。