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映画・演劇のレビュー

『るろうに剣心』

2012-09-02 20:59:03 | 映画
 このアクション大作も『デンジャラス・ラン』と同じで早すぎる。だが、これを見ながら別にそこには違和感はなかった。カメラが安定していて、視点がぶれないからだ。ドキュメンタリータッチを標榜して、不安定な手持ちカメラで、素早い切り替え、カット尻を削ぎ落して、目まぐるしいシーン展開を見せた結果、『デンジャラス・ラン』はあんなことになったのだ。それに引き換えこの映画はあくまでもちゃんと見せることを大事にするから、スピード感の追求がごまかしにはならない。TVの『龍馬伝』を見ているときに感じた違和感はここにはなかった。

 それは原作がマンガで、話自体もマンガでしかないからだろうか。安心してお話に集中できる。しかも、アクションシーンは、ストーリーの展開からはちゃんと切り離されて、アクションのためにアクションになっているのもいい。本来ならそういうのって、失敗作に対しての言葉だ。ドラマとアクションを融合させて、さらなる高みを目指すのが本来の在り方であろうが、この作品は陳腐な話を、一種の定番として受け入れて、そこには比重を置かない。あくまでも華麗なアクションシーンをどうみせるのかが、第一義となる。それと佐藤建演じる剣心をいかに恰好よく見せるのか。要するにアイドル映画なのだ。そこにちゃんと武井咲演じるヒロインは寄り添う。(彼女は先日の『愛と誠』とまるで同じポジションで、同じような芝居をする!)

 お決まりのストーリー展開。何のひねりもないところが、反対に心地よい。単純さは、時には貴重な力となる。定番をいかにびしっと見せるかが監督の腕の見せ所だ。大友啓志監督はそのへんをよく心得ている。様式美を追求したように華麗なアクションは、スピードと相俟って、実に美しい。だが、それがただの型にはならない。躍動感のある力と力のぶつかり合うファイトシーンとなる。殺陣も、ただの綺麗事でも、ただのアクロバットでもない。リアルな美しさを見せる。

 香川照之演じる悪役の憎々しさも、あそこまでやられると立派としか、言いようがない。適材適所に見事なキャスティングがなされ、役者たちも魅力的に描かれ満足だったのではないか。主役の2人も含めて、オーバーアクトさえ、計算されてあり、映画の中にきちんと収まる。文句のつけようのない一編だ。2時間14分の長尺なのに、飽きさせない。

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