大阪の劇団である万博設計と札幌の劇団である清水企画が名古屋の佃典彦の書下ろし新作戯曲を競作して同時上演するという企画。それぞれのホームグランドで2本一緒にこの10月に上演する。まず大阪先行で今週、さらに3週間後には札幌公演。
台本は実にわけのわからないお話で、最初の清水企画版を見たとき、何だったのだろうか、と戸惑うばかり。10分の休憩後、万博設計版を見る。同じ台本だから、さっきほど戸惑うことはないけど、やはりわけのわからないお話であることは変わりない。演出が変わったからといって内容が明確になるわけではない。ただこの捉えどころのないお話は、ただ奇を衒っているわけではなく、テーマである万国博覧会というより「万博」という記号を通して家族の絆を描くという底辺を流れるものが明確なので、そこを清水、橋本両氏がどう捉え表現するかというのが腕も見せどころだろう。
リアルな清水演出と、象徴的な橋本演出の違いが、同じ台本で別の世界を提示する。家出したした母との再会。外の砂嵐の中、廃墟と化したペットショップにたどり着いた娘は、そこで暮らす母親と向き合うはずが、なぜかそこで飼われているわけのわからないペットと向き合うことになる。「ぱびりおんさん」と名乗る男は、自ら檻の中にいる。ずっとそうしていたようなのだ。彼は実は母親の兄で、だから彼女の伯父さんにあたる。母は彼をUMAとして2025年の次の大阪万博に出品する計画らしい。このわけのわからない展開を中心に据えて彼ら3人のお話は展開する。
探検隊の話は彼らの祖父の話へとつながる。彼女は母親や伯父を通して自らのルーツをたどることになる。70年万博の記憶、4年後の2度目の万博への想い。それが何を意味することになるのか。そこには未来はあるのか。なぜ母親は家を出たのか。さらには期待されて挫折した優秀な妹への想いや、期待されなかった自らへの想い。そんなさまざまなものが交錯していき、この小さな世界を形作る。僕たちが今生きるこの世界がこれからどうなっていくことになるのか。家族の関係を核にしてこの世界のひとつの形を(未来を)模索する。