習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『天使の卵』

2006-11-07 21:41:31 | 映画
 こんなにも勘違いをした映画を見るのは久し振りのことだ。これでは映画とはいえない。ただの予告篇でしかないのだ。だいたい、ここからお話が始まるというところまでを提示した映画なんかを作ってどうするのか。しかも、それをダイジェストにしか見せ切れないなんてどういうこと?

 冨樫森は『鉄人28号』の時にも大勘違いをしていたが、これは酷すぎる。とても綺麗な映像で3人の恋を描いているように見えるが、その実、感情の揺らぎすら描けない。あのすばらしかった『非バランス』や『ごめん』を撮った人とは思えない出来だ。

 死んでしまった姉の夫と、とてもよく似た男を好きになってしまう姉妹の物語。なのに、映画にとって大事な存在である今は不在の死んだ夫について全く描かれない。彼への姉妹の想いが根底にあるのだから、そこをしっかり描かなくてはこの映画の存在意義はありません。描かないことで、映画に広がりが生じるかといえば、当然それもない。夫の面影を彼の中に感じそれを恐れる姉と妹。そんなことに気付くこともなく自分のストレートな感情をぶつけるまだ若い男。彼女が彼から距離を取ろうとするのは8歳年下だからではない。妹の彼だからでもない。そんな彼女の感情が描けなくては意味がない。

 だから、これではまるで意味をなさない陳腐なラブストーリーなのだ。姉が妹の彼氏であるその男を好きになる理由もわからないし、妹のほうも何を恐れていたかわからない。男の側から描いてるから彼の話として見たらそれはそれで見れるが、もちろんそれは、ただの出来損ない映画でしかない。なんで、姉が死ぬのかも分からない。ただのお涙頂戴ですらない。

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