夫を亡くした後の日々を描くエッセイ集なのだが、切々と綴る彼への想いが胸に突き刺さる。こんな個人的なことをありのままに新聞紙上で展開していいのかと驚く。でも、それが嫌じゃない。それくらいに彼が好き、という想いが伝わるからだ。身も世もない。淡々としたタッチで綴られてあるけど想いが溢れすぎて熱い。いいのか、これで、と思うくらいに。もちろんこれはこれでいい。あからさますぎて恥ずかしくなるほどだけど。
僕は、昨年6月7日、母を亡くして、それからの日々にはさまざまなことがあった。後悔ばかりででも、仕方ないと自分を納得させたし、だけど、今もちゃんと受け止められてはいない。このエッセイを読みながらそこに描かれてあることがまるで自分のことのように思えた。夫を亡くした妻と、母親を亡くした息子では立場は違うのだろうけど、自分が感じたことや、思ったことと似ている気がした。それに、彼女の夫である藤田宜永とその母親とのお話はうちの母親と僕との関係に近いかも、とも思った。
いろんな部分で共感することばかりで、驚く。藤田宜永の小説はあまり読んでいないし、それほど好きではなかったが、小池真理子は大好きでかなり読んでいるはずだ。でも、小説から受ける印象とこのエッセイとの間にある隔たりにも驚く。