何冊かエッセイを読んでいる。最近は気合いの入った小説が続いたので少し休憩を兼ねての読書。まずは僕のマリ『書きたい生活』。僕のマリって作者名だとは最初は気付いていなかったから、「あれっ、作者は?」と本を何度も見てしまった。これは彼女がエッセイストになるきっかけになった作品『常識のない喫茶店』の続編みたいだ。専業作家としてスタートする彼女の日々のスケッチ。日記を挟みながら、引っ越し、同棲、結婚へと、怒濤の毎日がのんびり綴られていく。30歳。一発奮起して馴染んだ喫茶店を辞めて新しい生活をする。そんな彼女のドキドキの時間が丁寧に描かれる。お決まりのコロナ禍の時間を背景にして、幸せに向かう毎日。書くことが好き。本を読むことが好き。それを仕事にできる幸せが、無邪気なくらいに素直に書かれていく。なんだか読んでいる僕まで幸せになれる。
続いて角田光代の猫エッセイ。こちらも引っ越しから始まる。猫のトトちゃんのためにマンションから一軒家に引っ越した角田さん一家。(といっても、彼女と同居人のふたりだけど)トトちゃんウォッチングの毎日。猫愛にあふれるエッセイは徹底している。トトのために、毎日がある。読んでいてなんだか幸せな気分になる。こんなふうに愛されたらいいだろうな、と。子供にいない夫婦にとって、愛猫への想いは子供への愛に勝るとも劣らない、なんて言いたくなるほどのトトとさらにはすべての猫に向けての愛が綴られる。「すべての」と書いたけど、描かれるのは庭にやってくる近所の猫ちゃんたちだけだけれども。
息抜きのエッセイだったはずなのだけど、気が付くと夢中で読んでいた。2冊ともそこには彼女たちの生きざま(のようなもの)が描かれていて、ちょっとした小説以上にドラマチックだった。