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映画・演劇のレビュー

遊劇舞台二月病『劣等"line』

2015-02-06 21:33:32 | 演劇
とても真面目な芝居で、扱うテーマもまるで教科書のようだ。それが中川さんの特徴で、今回だけのことではない。前回は「自殺」、その前は「差別」。そして、今回は「いじめ」について、である。普通ならテレてしまって、もっとはぐらかすところだが、彼はそれを真正面から直球勝負でみせようとする。気恥ずかしくなるような、ありえないような、そんな設定だ。だが、彼は臆することなく武骨な手付きでそれに挑む。

 しかも、彼は「道徳の授業が好き」だなんて挑発的なことを書く。当日配布のパンフの中の文章にそんなことが書かれてあった。ご丁寧にも、今回の芝居の中で、道徳の教科書を使ってある。

あの頃と今というふたつの時間をつないで、そこに横たわる人間関係の変化を描く。それだけならどこにでもある話の作りだ。だが、彼は二つの時間を対比させるのではなく、まるで地続きにして見せていく。偶然再会した友人。友人だと思っていたし、今もそう思っている。しかし、時間の経過により、それぞれの置かれる状況は変わっている。しばらくの空白が隔たりを生む。それを説明していくのではない。

あの頃だって友人だったわけではなかったかもしれない。今もまた、と。そんなふうに言う。それぞれの想いは、あの頃でも食い違ったし、今ではその比ではない。そんなふたりをお話の入口にして、彼らだけではない、あの頃の友人たちとの物語が始まる。

決して、上手い芝居ではない。それどころか、稚拙だ。だが、そのごつごつした肌触りが中川さんらしい。見せ方が洗練されてないし、そのせいでお話が混乱してしまう部分もある。故意に衣装をそのままにして、ふたつの時間を見せたり、ドラマとしての整合性にも欠く部分が散見する。しかし、このまっすぐさが好きだ。

過激なテーマを扱いながら、しかもとても無邪気に大胆なアプローチをするし、そんな中川さんにハラハラさせられながら、ドキドキする。だが、彼のまっすぐで生真面目な姿勢が、そのすべてを包み込んでくれる。こんなにも、重くて、暗い話なのに、何だか気持ちのいい芝居を見た、というさわやかな気分になれる。

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