習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『俺物語!!』

2015-11-08 19:19:47 | 映画
また、少女コミックの映画化である。もう、いいよ、と思う人もいるだろう。そういう人はもう見なくていい。これが少女漫画であることよりも、この映画が目指すものをちゃんと見なくてはならないと思うのだ。

余談だが、キネマ旬報の短評で、この映画のことを腐している評論家の文章を読んで、うんざりした。嫌なら見るな! 最初から偏見の目で映画を見るような輩には文章を書く資格はない。たぶん別人のものだが、先日の号の『先輩と彼女』の批評も惨かった。映画を純粋に見ようともしない人がイヤイヤ書いている。そんなものを、雑誌に載せている。まぁ、どうでもいいけど、それにいろんな考えがあるのだから、と思う。(ネットとかでめちゃくちゃな文章を見ると、(まぁ、見ないけど)困ったものだ、と思うだけで、それでも、腹がたつけど、)だが、雑誌とかに評論家とか名乗って書く文章はもっと、ちゃんとしたものを書くべきだろう。情けない。

「好きだ」と、ただその一言を言うだけのために、この1時間45分の映画がある。それをどれだけ尊いものとして描くか、そこがこの映画の生命線だ。笑わせるためではない。15歳の少年少女の純粋な想いをどこまで汲みとれたか、そこにこの映画の成否がかかる。見ながら、いささか危うい、とは思った。確かにしつこい、とも思わされた。

大丈夫か、この映画! という、ギリギリで、一発大逆転がある。感動した。鈴木亮平が30キロも体重を増やして挑んだこの挑戦は報われた。バカバカしいと一蹴される可能性の方が高かった。そういうコメディになるかもしれない、という危惧もあった。だけども、この映画は乗り越えた。ラスト、すべてに気付いた(鈍感すぎ! だけど)彼が全力で彼女に向って走り出すシーン。ベタなのに、その姿に感動した。

これはありだ、と思う。好きだ、に向かって何も考えず一直線に走りだす。それだけをこの映画は言いたかったのだろう。それがどれだけ尊いことか。15歳なのに、見た目「おっさん」で、そのことに、コンプレックスを感じている豪田猛男。彼の純情が、ストレートに彼女には伝わる。しかし、優しい彼はそんな彼女の想いに気付かない。そんなすれ違いだけで、映画は最後まで引っ張っていく。

三角関係のお話にしてもよかった。でも、そういう面倒なことはしない。この映画は一直線なのだ。そこもいい。親友同士は最初から最後まで、親友。好きは、最初から最後まで、変わらない。この映画は、砂川も大和のことを好きだ、と思う瞬間を描いているから、少しドキドキするけど、彼の好きは、剛田を差し置いて先には進まない。だいたい自分が入り込む余地なんかないと彼自身が一番よく知っている。そんな潔さもいい。

鈴木亮平は、このたわいもない映画に命をかけて挑んだ。たわいないからこそ、すばらしい。そのことを彼は十分に理解している。


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