久しぶりの楽市楽座だ。劇団は毎年新作を上演して全国を回っているし、もちろんホームである大阪でもちゃんと上演しているのだが、僕はここ数年、なかなか見に行く機会を持てなかった。2010年から毎年新作を持って全国を巡業しているという話だが。(コロナ禍は?)
十三で見るのは初めてだ。キリコさんと長山さんのふたり芝居になってからも初めてだから、なんだか懐かしいし、新鮮だった。いつもながらの投げ銭も楽しい。
最初、2匹のモグラが出てくる。彼らが地上を夢見る場面から始まる。そして最後は再びモグラの話に戻る。モグラが見た地上世界が描かれる。このプロローグとエピローグに挟まるお話の本編は、ツルのおつう(長山現)とツバメのソウル(佐野キリコ)がスペインの夏に出会い恋をする物語。千年生きたおつうにとってはこれが最期の恋。若いソウルにとっては初めての恋。そんなふたりの掛け合いが楽しい。
無理せずにふたりだけでこの小さな出会いの物語を紡ぐ。長山さんのギターに乗せてキリコさんが歌う。物悲しい物語が綴られていく。自分の死と世界の終わりが重なり合い、モグラたちの新しい旅が始まる。上演時間は90分。(実質は70分くらいか。真ん中でゲストタイムがあり、投げ銭回収もある)適切な長さだ。肩の力の抜けた芝居だが、実は辛口。だが、優しい。
野外劇は久しぶりで、それもよかった。秋の夜、十三の小さな公園にはたくさんの人たちが集まってきた。それは確かに幸せな時間だ。