まさかこう来るとは思わなかったから、その意外性に軽く驚く。この組み合わせが新鮮だった。お菓子職人の話。だけど冒頭から彼女は店をたたむ。近所にライバル店が出来て経営難に追い込まれたからだ。開店から5年で夢が潰えた。そんな彼女のところに料理研究家という老女(マダム)がやって来て、厨房を貸して欲しいという。そこでなんと料理教室を開講するようだ。しかも生徒は毎回ひとりだけ。さらには彼女にアシスタントをして欲しいという。アシスタントといいつつも実際には講師で、本人はほとんど何もしないから彼女の方がアシスタントというか傍聴人。さらには教室の受講生は料理だけでなく、悩みを抱えている。料理を作って悩みも解決って,何!
一応は短編連作スタイルをとっているが、主人公の白井さんが依頼人である老女(佐渡谷さん)と彼女が連れてくるお客さんを通して再びお店を再開するまでの物語になっている。
病いの治癒とお菓子作り。美味しいは楽しいし、幸せに通じる。そんな当たり前を享受する。白井さんも佐渡谷さんも、さらにはお客さんとしてここに来た面々も同志となってパティスリー・ブランシュ(白井さんの洋菓子店)の再開を祝うラストがうれしい。