額賀澪が『屋上のウインドノーツ』でデビューしたのは2015年。面白かったが、まだまだ未熟で若い彼女がこれから作家としてどうなっていくか、未知数だった。だけど、翌年には『タスキメシ』を書いてブレイクした。そこからは怒濤の展開である。ずっと読んできているけど、これだけの活躍をするようになるなんて思いもしなかった。
そんな彼女の最新作がこの小説である。幻の22回箱根駅伝から始まって100回箱根駅伝まで。戦時中から現在まで。ふたつの時代を往還して描く感動作である。
一度は戦争で中止に追い込まれた大会をもう一度だけ復活させるための戦い。戦時中にも関わらずに、軍部に掛け合って実現する昭和18年のドラマを中心にして、それと100回大会である令和6年に向けてのドラマを随時挟んで展開する。
箱根を走って戦場で死ぬ。これが人生で最期の走りとなる。そんな悲壮な話のはずだけど、彼らは箱根駅伝復活にすべてをかける。この先戦争に行き帰って来れない覚悟はある。だからこの1度限りの復活に賭けた。そんな壮絶なドラマを令和5年の二人が目撃する。大学の陸上部監督とパリ五輪マラソンが内定した学生。彼は箱根駅伝出場を拒否している。
今までの『タスキメシ』シリーズとはいささか趣きを異にするが、シリーズの完結編でもある。