大衆演劇というのはイメージではわかるけど、芝居小屋で実際にちゃんと見たことはない。(映画やTVなんかで、その一部を見たくらいか)だから、こういう形で疑似体験させてもらうのはうれしい。そしてそれが神原芝居の原点をたどるものにもなる。神原さんがずっとやり続けていることって、こういうことがそのルーツにあるのだと改めて理解できる。もちろん、そんなことはずっと前からわかっていたことだけど、こんなふうに師匠とのコラボを通して、彼女が心からそれを楽しんでいるのを目撃すると、見ているこちらまで幸せな気分にさせられる。そこに小劇場演劇の正しい在り方を見る。
たった40人ほどしか入らない小屋で(ザ・九条)たった一度の興業を打つ。その一期一会のドラマにドキドキする。演じ手と観客が一体となって、作品を支える。この瞬間はもう2度と戻らない。そんな一瞬に立ち会えたことが嬉しい。
今回の目玉は美影愛による本邦初公開の新作一人芝居『土魂一代 されど人』。この日のために彼が作ったものらしい。作品としては、まだこなれてないけど、そこが反対に魅力的だった。荒削りの美学か。ラストでは血まみれになる切腹シーンが描かれるのだが、(血糊が着物に付いて大変!)ちゃんとそこまでやるんだ、と感心した。それは過剰ということではなく、きちんとお客を楽しませたいという誠実さだと受け止める。
神原組による『お染かぜ、久松るす』もパターンをなぞって安心して楽しんでもらおうという気持ちがしっかり伝わってきた小品で悪くない。第一部の舞踊ショー(まな美座の里見剣次郎と美影愛、神原くみ子が魅せる)も含めてトータル2時間のプログラムを満喫した。