「本格小型時代劇」というなんだか不思議なネーミングが、ちょっと可愛くていい。小劇場できちんとしたセットを組んで、衣装もカツラも込みで、時代劇を作るなんて、なかなかないことだろう。(こんな体験、僕は初めて!) それなのに、肩肘張るのではなく、ちょっとキッチュで(とくに、カツラがかわいい)ホンワカした芝居、というのがいい。
しかも、これは吉弥さんと銀瓶さんによる落語ヴァージョン(しかも、ふたりの演目は違うらしい)も同時上演される。同じ台本からそれを落語にするのではなく、3つとも別の台本、でも、同じ話という豪華版(らしい)。わかぎえふさんがこの企画を楽しみ、エネルギッシュに取り組んでいるということがそこからも伝わってくる。これは確かに肩の力の抜けた作品だけど、お気楽で安易な思いつきではない、気合いの入った1作なのだ。
落語と芝居のコラボだからかもしれないが、普通の芝居1本分のボリュームなのに、まるで落語を一席見た(聞いた)くらいのシンプルさ。ストーリーを複雑にすることなく、でも、いろんな部分が気付くときちんと、つながっていて、オチに至る。冒頭の「首なめ男」の話からスタートして、赤穂浪士の討ち入りも絡めた台本が見事だ。タイトルからこれはシェークスピアかと、思ったが、長屋を舞台にした人情劇というなんだかよくわからないごった煮作品。それをちゃんと100分で見せてくれる。とても楽しい。