ＴＡＫＥ ＩＴ ＥＡＳＹ！×末満健一『千年女優』

　今敏監督の『千年女優』を見たのはかなり昔のことだ。大阪では今ではポルノ劇場となった千日会館という小さな劇場でひっそり公開された。それまでのアニメーション映画とはちょっと肌合いが違う大人向けの映画で、当時、こういう映画は日本ではまだまだ市民権を得ていなかったはずだ。なんとも懐かしい。

　ＴＡＫＥ　ＩＴ　ＥＡＳＹ！×末満健一のよる舞台版はあの映画へのオマージュではなく、あの題材を元にしたオリジナル舞台作品である。大胆にも程がある。

　あの映画をそのままに舞台化するだけでも難しいのに、それを更なる困難な状況に追い込んで舞台化しょうとする。５人の女性キャストだけで、２００人に及ぶキャストを演じる。しかも、ヒロインを５人がリレー式に演じるのだ。時と場所の変化に応じて万華鏡のように表情を変える藤原千代子を彼女たち全員が演じ分けるのだ。

　最初は話の展開を呑み込むのにも苦労することだろう。だが、だんだんこのスタイルに馴染んできて、加速するドラマをこのやり方がきちんと援護していくうちに、このスタイルがなんだか心地よいものとなる。６０歳の男を、有無を言わせずうら若き女性が演じ、無理から納得させる力業には、最初はため息をつくしかないのだが、慣れてくるとそれすらも快感となる。

　９０分という少し短い上演時間も、このスタイルにちょうどよい。全力疾走で愛しい人を追いかけて、時代を駆け抜ける彼女の姿を、彼女を取り囲むさまざまな人々や我々観客までも含めて、みんなで一緒になって追いかけることになる。スクリーンを突き抜けて、時空を越えて、宇宙の果てまで走り抜けていくのだ。そのスピード感溢れる荒唐無稽のドラマをこの舞台は見事に再現した。見事だ。