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映画・演劇のレビュー

満月動物園『レクイエム』

2017-06-15 21:02:29 | 演劇

 

丸尾丸一郎のオリジナル台本を得て、戒田竜治がそれを満月動物園の作品として仕上げる、とても豪華な作品。いつもの戒田さんとはひと味もふた味も違うテイストの作品にはなった。だが、それがあまり上手く機能していないことも事実だろう。

 

ミステリータッチで猟奇的な台本を、ロマンチックに仕上げたため、そこに齟齬が生じる。どちらにも徹しきれない中途半端さが作品を欲求不満なものにしてしまった。いっそどちらかに振り切れていたならいいのだが、台本も演出もお互いに遠慮しあった結果こういうことになったのだろう。

 

10年という歳月の意味。18歳から28歳という時間。女の子たちが、どう変わっていくのか。彼女たちのせいで人生を狂わされてしまった教師。同時に彼は、彼女たちの人生を狂わせた。彼は被害者でも有り、加害者でもある。彼が再び、この町に戻ってくる。(箕面という実名をあげている)

 

再びここに戻り、別の学校で教師として再出発することになった彼の元に届く同窓会の案内。見知らぬ(記憶にない)女からの誘い。10年ぶりに彼女たちと対面するのだが、彼女たちは彼を今も許してはいない。

 

そんな同窓生のメンバーのうちの2人と教師、手紙を受け取ったその3人は、裏山にタイムカプセルを掘り起こしに行く。タイムカプセルの中で腐っているチョコや、燻る記憶。あのとき、何があったのか。ミステリー仕立てで、不在の女の謎に迫る。森の中の小屋に監禁された3人が狂気に陥っていくことで見えてくる10年の歳月と彼らの罪。忘れていたことを思い出すこと。

 

ここからはもっとおどろおどろしいものになっていかなくては、この恐さは伝わらないのだが、そこを戒田さんはきれいに作り上げてしまう。終盤の展開が甘いから、方向性の見えない作品になってしまったのが残念だ。

 


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