僕は初演も再演も見ているから、これで3度目になるので、免疫はできているけど、初めてこんな芝居を見せられた人は絶対戸惑うだろう。しかも、今回はスペシャル版で、芝居自体よりも、芝居の途中で劇場内に家を建ててしまうのだ。終わった後は再び壊して、更地にしてしまう。ウイングフィールドは、元はオーナーである福本さんの自宅だった。ビルの4階部分を住居としていたらしい。その当時の間取りを再現して、復活させる。
今回の芝居はそこがメインとなる、といっても過言ではない。もちろんもともとある『空腹者の弁』をこの空間で見せるのだが、彼らのやりとりよりも、おうちの再現。
ベニア板で空間を仕切り、部屋として再現していく。観客はその作業の邪魔にならないように、あっちのこっちに移動しながら、見ることになる。客席はない。最初から客席と舞台の区分はなく、途中からはひたすら福本家を作ることに専念する。廊下、リビング、和室、居間。さらには風呂やトイレも。なんと、トイレに閉じ込められていた観客もいた。
キャストと観客の境目もなくなり、気付くと台詞をしゃべる役者の横に並んで、立っていたりもすることになる。こんな不思議な体験はない。今回もプラモデル作りとか、あるけど、彼らの交わす言葉の意味が希薄になる。もともと、そこを考えても詮無いことなのだが。ただただ驚き、呆れて、気付くと終わっている。そんな芝居だった。(たぶん)