デビュー作『わたし達はおとな』に続いての演出家・劇作家の加藤拓也監督、第2作。今回は前回以上にさりげなく、これでは伝わらないよ、というギリギリを狙ってある。夫のいる女と妻がいる男。よくある不倫だが、そんなふたりがいつも通り一泊旅行に行く。その帰りに彼は交通事故に遭って死ぬ。あっけなく。そんなこともあるだろうけど、自分たちがそんな目に遭うなんて思わなかった。
その後の時間が描かれていく。上手くいってない夫との関係。親友の援護。彼の妻から面会を求められる。そんな日常が綴られる。そうなのだ。彼が死んでも日常は続く。夫との別れまで。
感情を表には出さない。ずっと心に秘めたまま。自分が何を求めているのかもわからない。ラストで気持ちを夫にぶつけたけど、それが本音だというわけじゃない。説明のつかない想いを持て余しながら、生きている。無表情の門脇麦を映画は追い続ける。恋愛映画ではない。じゃあ何なのか。よくわからないけど、心惹かれる。