習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ゴールデンスランバー』

2010-01-23 07:57:09 | 映画
 このお話は明らかにおかしい。リアリティーがない。だいたい日本の警察はあんなにも簡単に発砲出来ないはずだ。しかも、総理暗殺事件の謎にはまるで迫らない。この映画にとってそこはただのきっかけでしかない。でも、それってかなり大事な部分ではないか。これって大事件ではないか、と思うのですが、いいんですか?

 だいたい彼は誰にはめられたのか、まるで描かれない。まぁ、彼の立場だけから世界を描こうとするのがこの映画の狙いなら、それはそれで仕方ない気もするが。それにしても、あまりにのんびりしすぎてる。いいのか、こんなことで。だいたい日本の警察はもっと優秀ではないのか。しかも、事件を担当する香川照之警視正は切れ者らしいのに、なぜか間抜けだ。話の展開はルーズすぎる。これでいいのか? 見ていてそっちの方が気になり不安になる。

 主人公の青柳(堺雅人)が、まるで追いつめられないのも、凄い。絶体絶命になっても、簡単に切り抜けられる。嘘くさいくらいの上手く切り抜ける。わざとそんなふうに作ってあるのかというと、必ずしもそうではない。では、これはファンタジー映画か、というとそうでもないはず。まぁ、原作は例によって伊坂幸太郎なんで、こんなもんか、とは思うが、それにしてもあまりに話の作りが緩すぎて、笑ってしまう。だが、湊かなえのような稚拙さはないから、これはこれで楽しめる。突っ込みどころ満載で、それを作り手までもが楽しんでいる。こんな不思議な映画はめったにない。

 小技のトリックの上手さで見せるのが、伊坂小説の魅力で、中村義洋監督は、よくわかっている。今回も大作風なのに、実はそうではないというところが魅力でもある。だから、これはこれでいいのだ、とは思うのだが、なんか物足りないのも事実だ。壮大なお話でも、前回の『フィッシュ・ストーリー』(『2012』に匹敵する)のようなホラ話なら、いいが、今回はあくまでもリアルな話がベースなんで、なんだかこの緩さはどうかなぁ、と思う。正直に騙された!って思って、爽快な気分にはなれない。だが、見終えた後結構爽快な気分だったりもする。

 濱田岳がなんかあったら助けに来るし、でも、彼は連続通り魔で、あぶない人だったりする。彼だけではない。青柳を助ける人たちはみんな都合よすぎ。だいたい大学のサークル仲よし4人組(青柳含む)が彼を助けるのもなんだかなぁ、と思う。映画全体が彼らの友情物語になってるのも、この映画のストーリーラインから考えるとバランス崩し過ぎ。しかも、彼らの回想シーン長すぎ。サスペンス物のはずなのに、のんびりしたのはそのせいだ。ほのぼのとしたまるで青春映画のような描写が続く。花火のエピソードとか、あれでいいのか? しかも、ラストで花火がどかーんと上がるし。マスコミとかも、安易にも程がある。

 書いてるだけでバカバカしくなってきた。これはホラ話か?コメディーか? なんとも分類不可能な映画だ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 湊かなえ『少女』 | トップ | 飛鳥井千砂『サムシングブルー』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。