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映画・演劇のレビュー

『ニューヨーク、アイラブユー』

2010-03-04 21:32:05 | 映画
 『パリ、ジュテーム』に続くシリーズ第2弾。今回はニューヨークが舞台に選ばれた。前作と同じように10人の監督が描く都市を舞台にした短編連作。今回の特徴は、各エピソードが独立せずに1本の話として構成されてあること。この姉妹編は、あんなにもすばらしかった前作以上にチャーミングな作品に仕上がった。

 それぞれのエピソードのさりげなさがいい。ほんの数分で終わるものもある。そっけないくらいだ。この街の様々な顔が、魅力的なキャストを通して描かれる。これを見ると無性にニューヨークの街歩きがしたくなる。この映画を見ていると、散歩するだけでも幸せな気分になれそうなのだ。この映画の中では、街の風景がそこで暮らす人たちの様々な姿と等価に描かれる。主役は街自身だ。

 冒頭の自分より一枚上手の相手(でも、この男も大慨だが)の登場に調子を狂わされるスリの青年の話でまずこの映画の世界に乗せられる。中年の教授役のアンディ・ガルシアがいい。彼は若い女学生と恋をしている。彼女にちょっかいを出す青年に対して容赦ない。

 ダイヤモンド街で商人に打ち明け話をする挙式を控えた若いユダヤ女性(ナタリー・ポートマン)の話も衝撃的だ。引きこもりの作曲家(オーランド・ブルーム)の話は岩井俊二が監督している。

 一番気に入ったエピソードはプロムに胸をときめかせる高校生の話。プロムに同伴してくれる女の子がいない彼が、ついに相手を見つける。だが、彼女は車椅子に乗った少女だった。彼は彼女の車椅子を押しながら会場に向かう。そして、衝撃の展開。さらにはもっと衝撃の事実が明かされる! なんだか、このエピソードは衝撃だらけだなのだが、それがとってつけたようなものではないのがいい。なんだか、笑ってしまうくらいの可愛い。

 思い出のホテルを尋ねる元オペラ歌手(シェカール・カプール監督。ジュリー・クリスティ、シャイア・ラブーフ主演)のエピソードや、ラストの老夫婦を描く一篇(『愛より強く』のファティ・アキン)もすばらしい。

 なんと、『鬼が来た!』のチアン・ウエンも参加しているし、ナタリー・ポートマンの初監督作品(とてもかわいらしい作品で、その他の作品と較べても全く遜色ない)まである。盛りだくさんなのだが、それが先にも書いたようにさりげない描写で綴られていくから、軽く流せて気持ちいい。変な満腹感とは無縁で、軽やかなフットワークを感じさせる。

 

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