こういうハートウォーミングで心和むことが出来たなら、それはそれでいい。「こんなもの、つまらない」と一笑に付すことも可。これはそれくらいにたわいもない映画だ。でも、この映画の真面目さはバカにしてはならない。観客をなめてかかったような安易な映画なら要らない。そうではなく、たとえ甘い映画であっても、伝えたい気持ちがしっかりしていて、それが確かに伝わってくる映画であったなら、じゅうぶんだ。そして、これはそんな映画だ。
西島秀俊がいつもと違って、ずっと不器用に笑い続ける映画だ。そのちょっとはにかんだ不自然さが、嘘くさく見えて、でも嘘くさくはない。彼はもしかしたら、無理しているだけかもしれない。でも、努力して今の自分をみんなに認めさせた。みんなもそれを受け入れた。そんな関係がこの遊園地にはある。それは笑顔の話ではない。仕事の話だ。様々なイベントを企画して成功させた。ここの再生を可能にした。そんなふうにして彼と彼の仲間であるスタッフが作り上げた夢の場所。それがこの遊園地である。ここまでがこの映画のお話の大前提。
そこに今年ふたりの新人がやってきた。お話はそこから始まる。地方の遊園地(熊本のグリーンランド)を舞台にして、東京からやってきた波瑠演じる主人公の新入社員が、この遊園地のスタッフたちとの交流を通して成長していく姿を描く1年間のお話。(ちなみにもうひとりの新人は岡山天音)よくあるパターンから一歩も出ないけど、それでいい。
コロナの影響で、なんだか殺伐とした毎日で、だからこそ、こういう映画は一種の清涼剤となる。今はなんとなく、ふだんなら見ないようなこんな映画を見てしまう。たわいもない映画だけど、それでいい。