最近読んだ本はいずれもなんだか中途半端で、おもしろいはずなのに、乗り切れないで、もどかしい。今読んでいるはらだみずき『帰宅部ボーイズ』という70年代の中学生を主人公にした小説も、つまらないわけではないし、世代的にも近いから作者の気持ちはよくわかるのだが、これにも、なんだかあまり乗り切れない。今、半分ほど読んだし、今日できっと読み終わるけど期待できない。作者が感傷におぼれ過ぎているのではないか、と思う。作品との距離感を見失うと小説は読者を置いてけぼりにする。
遠野りりこの『マンゴスチンの恋人』という小説はとても微妙で、あと少しで傑作になりそうなのだが、ぎりぎりでつまらない。4話からなる連作なのだが、ちゃんと円環して、完結する。自分の性に対して違和感を持つ高校生たちのお話だ。それが同性愛とか、性同一性障害とか、簡単に説明のつくものではない。形からではなく、現実の状況や想いから、入る。当たり前のことだろう。自分たちが直面するとまどいをどう受け止めたならいいのかわからないまま、苦しむ。そんな高校生の男女の群像が描かれる。4話目だけ、先生が主人公になるが、(これだけ短い)ここで躓く。作者はこのエピソードで全体を上手くまとめようとしたのかもしれないが、反対にせっかくの曖昧さが中途半端な決着の付け方で台無しになる。
川島誠の『神様のみなしご』もなんだか、惜しい小説だった。これも群像劇だ。孤児院(愛生園)にやってきた子供たちのそれぞれのドラマが綴られる。6人の話で、それが8話からなる。各エピソードでひとりずつが描かれるのではない。単独だったり、2人セットだったり、さまざまだ。しかも、「再び」というのもあるから、ね。それぞれの事情、それぞれの心情、とてもよくわかる。読んでいて引き込まれる。でも、それ以上の何かがないから、話はただ流れていくばかりだ。ラストのその後の彼らを描くエピソードも、わるくはないけど、インパクトに欠ける。今なぜ孤児院なのか、よくわからない。
伊坂幸太郎の描き下ろし長編『夜の国のクーパー』も、あれだけのボリュームなのに、なんだか中途半端な作品でがっかりした。ここでないどこかの世界での戦争が描かれる寓話なのだが、ネコの視点から語られる小さな国と大きな国の顛末がなんだかとてももどかしい。どうしてこんな小説を書く気になったのだろうか。いつものようには、お話の仕掛けが上手く機能していない。ネズミとの部分との2重構造もありきたり。ネコが言葉をしゃべるという設定を、ことさら強調しないのはいいけど、でもその仕掛けが作品全体を、そして僕たち読者を、どう新鮮な世界へ連れていくのか、そこが作者の腕の見せ所なのだが、なんか、あまり上手くない。この世界の漂流した主人公のはずの男の存在なんか、途中から忘れ去られる。それもなんだかなぁ、と思う。バランスが悪いのだ。
遠野りりこの『マンゴスチンの恋人』という小説はとても微妙で、あと少しで傑作になりそうなのだが、ぎりぎりでつまらない。4話からなる連作なのだが、ちゃんと円環して、完結する。自分の性に対して違和感を持つ高校生たちのお話だ。それが同性愛とか、性同一性障害とか、簡単に説明のつくものではない。形からではなく、現実の状況や想いから、入る。当たり前のことだろう。自分たちが直面するとまどいをどう受け止めたならいいのかわからないまま、苦しむ。そんな高校生の男女の群像が描かれる。4話目だけ、先生が主人公になるが、(これだけ短い)ここで躓く。作者はこのエピソードで全体を上手くまとめようとしたのかもしれないが、反対にせっかくの曖昧さが中途半端な決着の付け方で台無しになる。
川島誠の『神様のみなしご』もなんだか、惜しい小説だった。これも群像劇だ。孤児院(愛生園)にやってきた子供たちのそれぞれのドラマが綴られる。6人の話で、それが8話からなる。各エピソードでひとりずつが描かれるのではない。単独だったり、2人セットだったり、さまざまだ。しかも、「再び」というのもあるから、ね。それぞれの事情、それぞれの心情、とてもよくわかる。読んでいて引き込まれる。でも、それ以上の何かがないから、話はただ流れていくばかりだ。ラストのその後の彼らを描くエピソードも、わるくはないけど、インパクトに欠ける。今なぜ孤児院なのか、よくわからない。
伊坂幸太郎の描き下ろし長編『夜の国のクーパー』も、あれだけのボリュームなのに、なんだか中途半端な作品でがっかりした。ここでないどこかの世界での戦争が描かれる寓話なのだが、ネコの視点から語られる小さな国と大きな国の顛末がなんだかとてももどかしい。どうしてこんな小説を書く気になったのだろうか。いつものようには、お話の仕掛けが上手く機能していない。ネズミとの部分との2重構造もありきたり。ネコが言葉をしゃべるという設定を、ことさら強調しないのはいいけど、でもその仕掛けが作品全体を、そして僕たち読者を、どう新鮮な世界へ連れていくのか、そこが作者の腕の見せ所なのだが、なんか、あまり上手くない。この世界の漂流した主人公のはずの男の存在なんか、途中から忘れ去られる。それもなんだかなぁ、と思う。バランスが悪いのだ。