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映画・演劇のレビュー

椰月美智子『消えてなくなっても』

2014-08-31 19:35:59 | その他
 たぶん2,3年前の夏のことだ。夏の大会の試合会場の体育館で、生徒が読んでいた『しずかな日々』を貸してもらった。それが椰月美智子の小説との出会いだ。読んでよかった、と心から思った。

 また夏である。この夏の最後にこの小説をたまたま読んだ。夏の終わりにぴったり過ぎて、なんだか怖くなる。ちょうど8月30日から今日、31日に読むなんて、運命だったのではないか、と読み終えて思った。そんなわけで、ここ数日に見た映画や芝居を差し置いて、この小説のことを、まず書く。今日書かねばならない、と気負う。(この先、結末にも触れるのでご容赦を)

 小説のラストも8月30日から31日だ。村で河童祭りが開催される日、そして、それは主人公の2人がここを去っていく日だ。ここで過ごした短い夏の日の記憶が走馬灯のようにかけめぐる。

 もう夏は終わりなのだ。彼らが生きた25年ほどの人生の最期に、彼らは最高の夏休みをもらった。でも、その時にはもう2人は死んでいたけど。でも、そんなこと、どうでもいい。ここでは、もう、生きているか、死んでいるか、なんてことは大事なことではない。あなたが、そこで、どれだけ満足したのか、それだけのことなのだ。それ以外はどうでもいいことなのだ。

 河童のキヨシが言う。「会えなくなったら、友達じゃないのか。死んでいるから友達じゃないのか。おかしな話だ。」と。

 「つきの」と「あおの」は、ちゃんと再会した。そして、何もない平凡なひと夏を過ごした。それでいい。「定められた運命というものは確かに存在する。問題は、運命とともにどう生きるかだ」

 手を合わせて祈ること。この世の中には人智の及ばない不思議な力がある。そんなバカな、とそこから目を背けたりはしないほうがいい。信じることだ。そして、祈る。世界はこんなにも美しい。それをしっかり知ればいい。

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