三木孝浩監督によるこの夏の3連作3連投の第2作。今回はSFだ。昨年の『夏への扉』に続いての2作目になる。どちらも80年代のハリウッドSF大作へのオマージュだ。前作は『バック・トゥー・ザ・フューチャー』で今回は『ET』。わかりやすい。しかもどちらもハードなSFではなくファミリーピクチャーを目指す。スピルバーグとゼメギスによる彼らが一番輝いていた時代の映画だ。今回は前作以上にそこへのオマージュがあからさまだ。
本作は夏休み公開のお子様向け映画というスタイルを踏む。でも、子供に媚びた甘えた映画ではなく、子供をちゃんと楽しませる映画を目指した。だから大人にとっては少し甘い目の映画になってもいい。夢のある楽しい映画。ドキドキハラハラして飽きさせない。でも疲れさせない。最後にはちゃんとほっとさせられる。そんな映画だ。2時間弱という上映時間も適切で、笑いもきちんと適度に挟む。悪役(かまいたちの大阪弁がなんだかおかしくて笑える)がみんな間抜けで、決して悪い奴らではないのもいい。そんなところも子供にやさしい。冒頭の風景はアメリカ映画のサバービアを思わせる。カメラはよくあるパターンで、カラフルなその町に空撮で近づく。『シザーハンズ』みたいだ。そこで子供のような中年男(彼自身が少年のまま大人になったようだ)二宮和也が目覚める。おとぎ話の幕開け。
夏休みの子供向けのファミリーピクチャーという意味では山崎貴監督の『ゴーストストーリー おばけずかん』にも通じる。2本とも基本姿勢も同じ。こんなふうに今日本で一番才能のありヒットメイカーでもあるふたりの監督が、同じ時期に競作でもするかのように新作を「夏休みの子供向けのファミリーピクチャー」に照準を当てて制作公開したのは興味深い。
だけど、2本ともこんなにも面白い映画だったのに、残念ながら興行的には全く振るわなかった。『ワンピース』の大ヒットの陰に隠れてしまい惨敗だ。悔しい。2本とも見に来た子供たちとその家族には好評だったはず。でも、誰も見に来なかった。それなりの予算で作った渾身の作品なのに。本作は二宮和也主演。それだけで動員が望めるかとも思われたけど、これはニノのファンの望む映画ではなかったのだろう。
この映画の描く近未来の世界はなんだか楽しい。今の世界のほんの少し先にありそうな世界だ。それは『バック・トゥー・ザ・フューチャー2』で描いた未来(あの89年制作の映画が描いた2015年の世界!)のようだ。あの映画の未来はすでに過去になったけど、あんなふうな未来ならありえたことだろう。未来は過去のように懐かしい。80年代へのオマージュだから、2020年代なのになんだかこれは1980年代のようなノリなのだ。そんな緩さも心地よい。二宮和也はロボット、タングとの共演を見事に演じきった。これは素敵な夏休みの贈り物のような映画だ。