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映画・演劇のレビュー

『サロゲート』

2010-01-08 23:12:43 | 映画
 ブルース・ウイリスに髪がフサフサ! この衝撃の事実だけでこの映画は凄いと思えればいいのだが、そんなギャグのような映画ではないし。これはれっきとしたSF大作映画である。あの『ターミネーター3』のジョナサン・モストウ監督作品だ。だから、期待しないわけにはいかない。なのに見終えた時には、なんだか不満が残る。つまらないことは断じてない。だがあまりにしょぼい。

 内容としては『ブレードランナー』の流れを汲む作品なのだが、アイデアが生かしきれてないのだ。この作品は、レプリカントは人間か、という定番メニューをいかに新機軸で見せるかがポイントになる。それと『アバター』と同じように自分のためのもう一つの身体、というアイデアが軸になる。まぁ乱暴だが、簡単に言うとこの2つの融合体とでも言うべき映画か。

 人間は、自分の身体をベストな常態にしたレプリカントによって生活する未来社会の話。だから、人間は寝たままレプリカを遠隔操作してその身体で生きる。レプリカに本人の意識が入って生活するのだ。生身のままの人間と、レプリカントを使用した人間が共存する世界。人間は生身のままで暮らすべきだ、と主張するグループのリーダーや、このロボットを開発した科学者、そしてわれらがブルース刑事が、殺人事件を通して交錯していく。

おもしろい 話なのに、それが単純に描かれるので、深みはない。派手なアクションを追いかけるだけのB級映画になってしまったのが残念でならない。(でも、予算はA級だと思う)悪くはないのだ。89分と短いのもいい。でもこのアイデアを通してもう少し思索的な映画に出来なかったのか。

 人間が人間であることって、どこにその意味があるのか。機械の身体で美しいまま永遠に年を取らない理想の生活の虚しさ、自分たちが作った理想郷を自分自身で壊そうとすること。単純だけど核心を突く真実をもっときちんと描いたなら、これは派手なアクションの域を超える映画になったかもしれない。『ターミネーター3』の時も、ただの派手なアクションでしかない、と言われたジョナサン・モストウがまた同じ轍を踏む。確信犯なのかもしれないが、なんだかもったいない。

 それにしても、繰り返すが、映画の前半の、髪がフサフサしたブルースはブルースではない。つるつるでピカピカの肌(ハゲではなく)で、若々しい彼はなんだかカッコ悪い。

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