もちろん『コロヨシ!』の続編なのだが、前作から受けるイメージとはかなり異なる。「掃除」というスポーツを題材にした青春熱血小説って、感じだった前作の続きなのに、話がどんどんスケールアップしてしまって今回は冒険活劇になっている。ここまでテイストが異なる作品になりながら、正統的続編であることには異論のない作品で、主人公たちも、お話もちゃんとつながっている。なんだか不思議だ。
もともとこの小説は不思議な話で、掃除がどうしてスポーツなんか、という根源的な疑問がまず最初にあり、もちろん、そこについてはちゃんと解説はあるのだが、この冗談のような設定が、おふざけではなく、シリアスで、この小説の描く世界では、かつて掃除が国技であった時代もあったことになっている。だが、このスポーツは、とある事情から封印され、国家の監視下で高校生だけに限って競技の認可が下りている。しかも、卒業後は禁止される。大会会場には一般観客はおろかクラブの部員すら出入りできない、とかあらゆる制約がある。なぜ、そんなことになったのか。その謎が解き明かされるのがこの第2作なのだが、あまりにスケールが大きすぎて「前作はただの予告編でしかなかった!」なんていうよくある宣伝コピーをここに書きたくなる(というか、もう書いてるし)ほどだ。
前作は完全な青春スポコンものだった。掃除というスポーツでさえなければ、どこにでもあるありきたりなお話である。(でも、おもしろい!)恋あり、友情あり、とてつもなく強いライバルとの火花を散らす戦いありの定番だ。ラストは全国大会に出場して最後の決戦を迎える。そこで、奇跡の大逆転! とか。そんな感じ。
そんなお話を受けて、今回は全国大会で3位になった主人公のその後が描かれる。3年になり、新入生を迎えさらなる飛躍が期待されるのに、次から次へと問題が噴出。さぁ、どうする! なんていうこれも続編の定番をいくストーリーに一見見える。だから、読んでいて、なんだかつまらない、とも思う。しかも、なかなかストーリーは先に進まないし。
だが、その停滞感は、いきなりの(予定されていたものなのだが)急展開で意外な方向に突き進む。国家的陰謀に巻き込まれて、彼はとんでもないところにむかうこととなる。そこで次から次へと危機がやってくる。そんな難局をクリアしていき、どんどんステージを上げていく。なんだかこれってゲームみたいだ。さまざまな謎のキャラクターが登場し、この意外なドラマのスケールは、グレードアップしていくし、レベルも上がる。マンガでしかないようなお話が、基本の部分ではちゃんとシリアスに展開する。でも、ドタバタであったり、ご都合主義のありえない設定であったり、安直なマンガに見えるように書かれてある。もちろん、わざと、だ。
こんないいかげんな小説なのに、終盤、読みながら涙がとまらなくなる。これはやばい、と思った。何がここまで涙腺を刺激したのか? 高校生が何かに夢中になり、損得なんか度外視して、必死にその何かに打ち込む姿がなんだかとても美しいものに思えたのだ。これって前作の感動と同じものだ。そして、青春スポーツ小説の定番でもある。この荒唐無稽の極みをいく小説で、「バカバカしい」のその先に、崇高なほどの純粋さで、スポーツの意味を描くのである。ここまでいくと、スポコンではないじゃん、と思うのに、精神の根源にはちゃんとスポコンがある。その落差に泣かされるのだ。ただ好きだから、それだけだ。それがこんなにも心地よい。
三崎亜記はいつも普通じゃない世界を、今ある世界をもとにして平然と作り上げるが、今回はその作り上げた世界すら更に凌駕していき、もとある設定を大幅に書き変えながら進化させる。500ページを超える長編なのだが、一気に読ませる。
もともとこの小説は不思議な話で、掃除がどうしてスポーツなんか、という根源的な疑問がまず最初にあり、もちろん、そこについてはちゃんと解説はあるのだが、この冗談のような設定が、おふざけではなく、シリアスで、この小説の描く世界では、かつて掃除が国技であった時代もあったことになっている。だが、このスポーツは、とある事情から封印され、国家の監視下で高校生だけに限って競技の認可が下りている。しかも、卒業後は禁止される。大会会場には一般観客はおろかクラブの部員すら出入りできない、とかあらゆる制約がある。なぜ、そんなことになったのか。その謎が解き明かされるのがこの第2作なのだが、あまりにスケールが大きすぎて「前作はただの予告編でしかなかった!」なんていうよくある宣伝コピーをここに書きたくなる(というか、もう書いてるし)ほどだ。
前作は完全な青春スポコンものだった。掃除というスポーツでさえなければ、どこにでもあるありきたりなお話である。(でも、おもしろい!)恋あり、友情あり、とてつもなく強いライバルとの火花を散らす戦いありの定番だ。ラストは全国大会に出場して最後の決戦を迎える。そこで、奇跡の大逆転! とか。そんな感じ。
そんなお話を受けて、今回は全国大会で3位になった主人公のその後が描かれる。3年になり、新入生を迎えさらなる飛躍が期待されるのに、次から次へと問題が噴出。さぁ、どうする! なんていうこれも続編の定番をいくストーリーに一見見える。だから、読んでいて、なんだかつまらない、とも思う。しかも、なかなかストーリーは先に進まないし。
だが、その停滞感は、いきなりの(予定されていたものなのだが)急展開で意外な方向に突き進む。国家的陰謀に巻き込まれて、彼はとんでもないところにむかうこととなる。そこで次から次へと危機がやってくる。そんな難局をクリアしていき、どんどんステージを上げていく。なんだかこれってゲームみたいだ。さまざまな謎のキャラクターが登場し、この意外なドラマのスケールは、グレードアップしていくし、レベルも上がる。マンガでしかないようなお話が、基本の部分ではちゃんとシリアスに展開する。でも、ドタバタであったり、ご都合主義のありえない設定であったり、安直なマンガに見えるように書かれてある。もちろん、わざと、だ。
こんないいかげんな小説なのに、終盤、読みながら涙がとまらなくなる。これはやばい、と思った。何がここまで涙腺を刺激したのか? 高校生が何かに夢中になり、損得なんか度外視して、必死にその何かに打ち込む姿がなんだかとても美しいものに思えたのだ。これって前作の感動と同じものだ。そして、青春スポーツ小説の定番でもある。この荒唐無稽の極みをいく小説で、「バカバカしい」のその先に、崇高なほどの純粋さで、スポーツの意味を描くのである。ここまでいくと、スポコンではないじゃん、と思うのに、精神の根源にはちゃんとスポコンがある。その落差に泣かされるのだ。ただ好きだから、それだけだ。それがこんなにも心地よい。
三崎亜記はいつも普通じゃない世界を、今ある世界をもとにして平然と作り上げるが、今回はその作り上げた世界すら更に凌駕していき、もとある設定を大幅に書き変えながら進化させる。500ページを超える長編なのだが、一気に読ませる。