これはなんと魅力的なお芝居だろうか。この芝居が見たかった。公演中止の報を受けた後、仕方ないから、先に貰っていた台本を読んだのだけど、そのあまりの面白さに驚く(作、くるみざわしん)。これは大阪の五劇団(劇団大阪、劇団息吹、劇団きづがわ、劇団せすん、劇団未来)が総力を挙げて送るはずの芝居だった。
台本から、この芝居を想像するだけで、ドキドキする。お話は実にシンプルなのに、深い。実に面白い作品なのだ。ふたつの階層の女たちがそれぞれのアプローチで彼女たちが生きた時代と向き合う。戦場に向かう男たちに対して何が出来るのかを、考え、実現していく。女性目線というのがいい。しかも、群像劇だ。(もちろん、当然、女だけではなく、男たちの目線も交錯する。)
そんな女たちが生き生きと舞台上を闊歩する。戦時下の大阪を背景にして、彼女たちがそこで何をしようとしたのかが描かれる、はずだった。熊本一による演出はダイナミックで、繊細だろう。ピンポイントで捉えられた女たちの姿と、その背景にいる男たち、そして、戦争。ある時代をきちんと描くことで、今に通じる普遍性を獲得する芝居になることは必至だ。エネルギッシュで、切ない。そんな庶民の姿を捉えて感動的な舞台が作られていたはずだ。悔しい。