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映画・演劇のレビュー

『フライト』

2013-03-03 22:41:41 | 映画
 ロバート・ゼメギスが久々に実写映画に戻ってきた。『キャスト・アウェイ』以来だ。なんと12年振りの映画らしい。だから、とても楽しみにしていたのだが、予告編を見た時の印象とはまるで違う映画で驚いた。もっと派手なエンタメを期待したのだが、事故を描くパニックシーンは最初だけで、その後は、とても地味で、暗い映画になる。なんと、これは、アルコール依存症の話なのだ。主人公がそこから立ち直ることができるのか、ということがお話の根幹を為す。だから、なんとこれは分類上ヒューマンドラマだったりするのだ。

 事故の真相を解明するサスペンスですらない。ただ、ひたすらデンゼル・ワシントンがアルコールと戦い、どう克服するか、否か、という、そういう意味では確かにサスペンスなのだが、それって、聞くだけで、なんだかとても地味でしょ。実際、地味だし。でも、さすがにゼメギスだから、ただの陰々滅滅の映画にはしない。退屈させることはない。ちゃんと緊張感のある描写でラストまで飽きさせることなく見せる。2時間17分の大作なのだが、引っ張ってくれる。それにしても、これはもうひとつの『リービング・ラスベガス』なのだ。いやぁ、びっくりした。そんな映画を見るつもりじゃなかったから。

 でも、あの予告編からは、この映画がこんなにもシリアスな人間ドラマだなんて、僕だけではなく、誰もが思いもしないのではないか。きっと、だまされた、と思う人もいるはずだ。映画を売るためとはいえ、それってちょっとなんかズルイ気もするが、でも、とてもいい映画だし、それなりの満足感は保証してくれるから、まぁ、いいか。ただ、あれだけ宣伝したけど、この内容では絶対お客さんは入らないだろう。ハリウッドの娯楽大作ではなく、これは昔ながらのアメリカ映画の良心のような感動作品で、できることならもっとひっそりと公開されたほうがいい。最後まで見たなら描こうとしたことがよくわかる。確かにいい映画なのだ。でも、なんだかなぁ、である。


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