久しぶりの2劇である。コロナ禍後初の学外公演となるらしい。そうなんだ、あれからずっと一般劇場公演はなかったのか、と改めて思い返す。感慨深い。今回はまず音間哲の新作である。来年3月には満を持して阿部茂の新作も続くようだ。とても楽しみ。阪大の学内劇団というスタイルを貫いて60代になる阿部さんと音間さん率いる2劇団はずっと途切れることなく、入学してきた若い大学生たちと共に芝居を続ける。もうそれだけでも凄いことだ。彼らは学生の頃のままサークル感覚で無理せずにさまざまな芝居に挑む。そのフットワークの軽やかさには感心する。若い。
今回はSNSに挑む。音間さんは必ずしもSNSに通じているというわけではない、らしい。だから若い人たちから取材して勉強した上でこの作品に臨んだ。なんだかホッとする。僕は彼以上に疎いから、最初の配信枠を買うととかいうところから浦島状態だったけど、初心者にもわかりやすい展開なので、大丈夫。自分のアバターを作って配信をしようとするが、中身のないネタで上手くいかない。そこにX(ツィッター)さんやインスタさん、フェイスブックさん(ミィクシーだけど)にティクトックさんまで登場という展開。もうひとつの自分たちで狭い部屋の中は溢れ返ることに。
お話は怖い話にはならない。それどころがほのぼのした話で終わる。人格崩壊に至る話にしてもよかったけど、音間さんはそんなことにはしない。ネットとの関係性をさらりと描く。当たり前にネットがある時代の若者たちの感慨をコミカルに綴る。このフットワークの軽やかさが現役大学生たちと芝居を続ける原動力なのだろう。ラストに登場する男なんて『パーマン』のコピーロボット、パーマン2号を思わせる。とても楽しい作品だった。
ただラストの向かいのマンションの住人の正体を知る瞬間はかなり怖い。