今までとはかなりタッチの違う小説にチャレンジした。映画化を視野に入れたプロデューサー目線はなく、一作家としての作品だ。と、最初は思った。
だけど川村元気はやはりエンタメ系で、これは充分「純文学」できる題材なのに、気がつくとエンタメになる。それが悪いわけではないけど、なんだか中途半端でつまらない。組合費の横領、気がつくと1億円。そこではなく、馬との話に絞り込むほうがいい。と思いながら読んでいたら、すぐに終わった。152ページだから、ね。なんかあまりに中途半端すぎて読み終えた気がしない。途中でお話を断ち切られた気分。
彼女がここまで馬にのめり込んだわけがわからない。そこを描かないなら意味はない。しかも途中からお金を湯水のように注ぎ込む。破滅に至るまでに葛藤がない。1億円である。馬を買い、障害馬術の世界大会を目指すって話になるけど、まるで意味がわからない。そんなことにのめり込むことが彼女の望みだったのか? タガが外れる過程が見えないから、いきなりの展開に思える。
まさかの偶然の出会いから始まって、あっという間に馬を買うことになる。そこまでは面白かったのに、その先のお話の展開が出来ていない。とても残念だ。