91年作品。30年も前の映画だ。実は劇場で公開されていた時、少し気になった映画だ。当時のマイク・ニコルズ監督最新作だったし、ハリソン・フォード主演のハートフル映画。あの頃大好きだった『卒業』の監督だから見たいと思ったけど見逃した。今ではそんなことも忘れていたけど。たまたまタイミングが合ったので見ることにした。つまらなかったなら途中でやめればいい、というくらいの軽い気分で見始めた。BSPで映画を見るのは久しぶり。確かに甘くて、ハリウッド好みの映画だ。すごい作品というわけではない。でも、悪くはない。作品情報の解説には「家庭を顧ることもなく仕事一筋であった有能弁護士が、ある事故から記憶喪失に陥り、逆に人間の真実の愛情に目覚めるというヒューマン・ドラマ」とある。まさにその通り。だから、30分くらい見たところで、別に最後まで見なくてもいいかも、とも思う。でも、最後まで見てしまった。
強盗に襲われ拳銃で撃たれて、しゃべれない、うごけない、そんな最悪の状態からリハビリを通して復活する。けっこう速いテンポでさくさくストーリーは進むから見やすい。以前は冷酷で酷い男だったのに、子供のように純粋で以前とは別人になる。これもよくあるパターンだ。
映画を見ながら、見ているこちらまで彼と同じようになんだか優しい気分になる。たわいもない映画だけど、誠実。さすが『卒業』の監督だ。でも、これが彼が晩年たどりついた地平なのか。そう思うと、なんだかなぁ、とも思う。(それにしても、なんと脚本は、やがてあのヒットメーカーになるJ.J.エイブラムス! 驚きだ。これを彼がまだ20代で書いた。)
古い映画の独特な雰囲気が今日見るとなぜか心地よい。30年というのは昔の映画というには、まだそれほど昔ではないけど、いろんな風景やアイテムが今とは違い、のんびりしている。この映画の内容とマッチしている。でも、ここで描かれる問題は普遍的なことだ。豊かな生活はお金ではない、なんていう当たり前のことがさりげなく描かれる。ハリソン・フォードが『レインマン』のダスティン・ホフマンのような表情をするのがいい。崩壊していた3人家族が再生していくまで。110分の心の旅。たまにはこんな映画で休養を取るのもいい。