昨年の『真田戦記』をヴァージョンアップした作品だ。再演とは敢えて言わない。これは再演のレベルを超えている。完全版というのもはばかられる。新しい作品と呼ぶほうが適当だろう。
基本は同じ話だ。でも、見せ方が違う。それだけで別の作品のように思える。これはとんでもない進化だ。アバンタイトルだけで1本の芝居を見た気分だ。(かなり長いし)でも、今回のよさは本編に入ってからにある。大塚さんは(作、演出、照明)は、今回ドラマ部分に力点を置いている。前回はお話の部分が弱かった。アクションシーンばかりが前面に出たのだ。その反省に則り、今回は人間関係も含めてしっかりお話を見せていく。とはいえ、尺の問題もあるから、(当然、見せ場である派手な殺陣、アクションシーン、ダンスシーンを欠かすことはできないし、それが全体の50%を超えるのがブルーシャトルの芝居だ。歌舞伎のように見得を切る。見せ場はみんなに用意されている。だから、それだけでかなりの時間を使うこととなる。しかも、ダレさせることはないように見せる。今回も2時間40分あるけど、それでもまだ短いくらいだ。
刀を使った殺陣は華麗だし、前回同様の扇子を使うのも、いい。しかも、今回扇子同様の赤い(真田だからね)障子を大胆に使い、それをただ転換に利用するだけでなく、全体のメリハリをつける小道具、動く舞台美術として作品を彩らせる。30人に及ぶキャストは出たり入ってを繰り返し、常に動き回る。ひとりで何役もこなし、変わり身の早さを競い、激しいアクションの連打を見せる。若いというのは凄い。息切れすることもなく、あれだけのアクションをこなし、芝居を見せていく。
前回同様、家康と淀の二役をした田渕法明が今回も凄い。主役の幸村を演じる松田岳と対峙し、華やかで妖しく、大胆に可憐な演技を見せる。巨大な敵として幸村の前で立ちはだかる。この幸村対家康という単純な図式がいい。
大阪冬の陣から夏の陣を中心に据えたドラマが、今回はなんと幸村の少年時代から語り尽くされる。これは壮大な「大河ドラマ」なのだ。よくあることだが、すべてが終わった後に用意されたラストのオチもいい。