こういう小さなお話を、90分程度(91分)の小さな映画として無理せずちゃんと収めるのは上手い。小さな寓話として気持ちよく見られる。インド映画のはずなのに、よくあるマサラムービーのこってりとした商業映画とは一線を画する。だからといってアート映画では断じてない。ジャンル的には児童映画ということになろうか。昔よくあったイラン映画。キアロスタミの『友だちのうちはどこ?』の路線に近いけど、ラストのオチも含めて、これはもちろんもっと甘いし軽い映画だ。
ここに多くを期待したなら、がっかりするけど、何も期待せず見ると、おおっ、と思わされる。特にロケーションが素晴らしい。少年たちが駆け抜ける町のたたずまい。ドキュメンタリータッチで捉えた描写が凄くいい。母親や祖母とのやりとりも生き生きしていて、インドの下層市民の日常のスケッチとして新鮮。
何も考えず、見ていると、お話も微笑ましくて、気持ちがいい。子どもたちの無邪気さ、小さな冒険。彼らの生活圈に出来たピザ屋もスノッブというほどではないし、手が届きそうで届かないという微妙さがこの映画の上手さか。リアリズムではなく、ちょっとしたファンタジーとして愉しめる。