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映画・演劇のレビュー

『告発のとき』

2008-07-07 22:17:03 | 映画
 ポール・ハギスの第2作。『クラッシュ』の衝撃は今も消えない。あんなにも強烈なドラマを組み立ててしまった彼が、あの後何をするのか。何をしたったあの映画を超えれない、それくらいの映画を彼はもう作ってしまったのだ。そんな彼の新作である。内容なんて知らなくてもいい。まず、劇場へ!

 前作と較べると(いきなり比較かい!)これはとても普通の映画で、前半はテンポも遅く、少し期待はずれ。トミー・リー・ジョーンズ演じる父親が軍隊を抜け出し(あるいは事件に巻き込まれて)帰ってこない息子を探し出そうとする話。イラクで息子は何を見たのか。帰国した彼に何があったのか。それが、ゆっくり見えてくる。映画は慌てることなく(と、いってももし時間までに彼が帰ってこなかったなら、彼は脱走兵扱いとなるが)少しずつ核心に迫っていく。

 だが、その衝撃に事実なのだが、とても単純で、なんだか肩すかしを食らった気分だ。確かに恐ろしい事実だろう。アメリカはイラクまでいって一体何をしたのか、と思う。それだけ。

 ハギスらしいテーマ設定、誠実な作り方。見て損はない。イーストウッドによる『父親たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』の2部作の延長線上にある作品だと理解すればいい。だが、『クラッシュ』の痛ましさと較べるとなんとなく頭で作っただけ、という印象が残る。

 イラクで若い兵士たちが受けた衝撃をドキュメントしていくような直球勝負の映画が見たかった。シャリーズ・セロンの刑事を描く部分も、5歳の子供を抱えて、自分の信念のもと、必死に生きる彼女の姿には好感が持てるが、なぜ彼女がここまでこの事件にコミットしていくのか、それが息子への思いにどうつながっていくのか。狙いはわかるが、これでは描ききれていない。

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