79年12月12日。これは『ソウルのいちばん長い日』を描く超大作映画だ。昨年韓国でNo.1ヒットとなった作品らしい。当然だろう。これだけの力作であり、オールスター映画である。だが、日本ではこんなにもひっそりと公開された。それはまぁ仕方ないことかもしれないけど、なんだかもったいない。これは社会派ではあるが、娯楽活劇でもある。
「最後は悪が勝つ」という話は、知らない人が見たらまさかの展開である。この映画を見ようと思う人は結末を知っているだろうが、何も知らない人がこれを娯楽映画として見たら、驚きの展開のはず。
徹底的悪役ファン・ジョンミンが素晴らしい。彼はこんなも憎たらしい小物を見事に演じた。しかもそれがわざとらしい演技ではなく、自然体。前半部分は、こんな奴にクーデターは出来まいと思うほど、ヘボい。だけど、こいつがなかなかしぶとい。そしてラストはまさかの正義に勝つ。(まぁ史実だから、ね)
軍事政権を倒すための暗殺から始まったドラマはフィクションではないけど、まるでフィクションの手触り。これもファン・ジョンミンの力だろう。正義と悪の戦い。正義の味方、首都警備隊長チョン・ウソンとの一騎打ちという図式。独裁政権を目論む悪玉。ふたりを中心にして、さまざまな思惑を持つ人物が入れ替わり立ち替わり登場する。史実をモデルにしたノンフィクション映画なのに、荒唐無稽な娯楽活劇である。2時間22分、ラストまでハラハラドキドキの展開を見せる。
韓国にとっては悪夢のような80年代の始まりである出来事を重厚なエンタテインメントとして仕立て上げたこの隠れた傑作映画は現在日本で公開中。