神原さんにはめずらしい再演ものだ。この3月で閉鎖されるザ・九条の閉幕プログラムの一環としての1本。彼女が敢えてこの作品をここに持ってきた意図は明白だ。終わっていくことへの最大限の拍手を送る。死は負けではない。生きたことの証だ。同じように小屋を閉めるのも、敗北ではない。たった5年間ではなく、5年もの時間を劇場として生きたこと。そのことへの最大限の賛辞を込めて、この作品を贈る。
ザ・九条の狭い空間がとても広い空間に見えてくる。それこそが小劇場本来の魅力なのだと思う。久々にそんな当たり前のことを実感させられる。70分ほどの短い芝居だ。でも役者たちは自由でのびのびしていて、彼らを見ているだけでドキドキする。 これまでに何度となくこの劇場を使ってきた神原さんだからこそこの狭い空間を確かに生かしきれたのだ。
そして、何よりも3人のアンサンブルが素晴らしい。神原さんが久々に本気で舞台に立っている。だから、主役の2人が輝いた。近くで役者をみることで生じる感動がここにはある。