邂逅は今年もこのスペースコラリオンで12月公演をしてくれた。そして、またこのささやかな小スペースだからこそ可能な芝居を見せてくれた。今の自分たちの身の丈に合う適切な作品を作ることって、難しいはずだ。だけど彼女たちはやすやすとそれ乗り越えてしまう。無理をしないし、妥協もしない。
コロナ禍だから、小さな芝居を低予算で行わなくてはならないのなら、それでいい。反対にそれだからこそ可能な挑戦がある、と思う。今回取り上げたのはオスカー・ワイルドの『幸福の王子』。これをミュージカル仕立てで30分ほどの短編として仕上げる。装置はいらないけど、しっかりと衣装には贅を凝らし手をかける。(決して贅沢ではないけど、この作品にはぴったりだ)5人のキャストが自分たちの持ち場をきちんとこなし、作品を支える。主人公となる小林桃子演じるツバメが素敵だ。彼と王子とのやりとりで話は進んでいく。王子は銅像だから動かない。王子の像の下で話しかけるツバメとのやり取り。そして、彼が王子からのプレゼントを配達するエピソードが淡々と描かれる。それだけなのに、見ているうちになんだか胸が痛くなる。歌うシーンも無理なくささやかな色どりとして作品の中にうまく溶けこむ。
5分の換気休憩の後、後半、『水たまりの王子さま』(山崎陽子)が始まる。これは『幸福の王子』と呼応する作品で、この2作品を連続で並べて見せることで、そこには見事に一つの世界(なんならそれを「宇宙」と呼んでもよい)が構築される。これはちんけなスリと、足が悪くて部屋から動けない女の子とのふれあいを描くささやかな作品だ。少女のいる窓とスリの男がいるそこから見える世界(ただの空き地だけど)。それがふたりにとってはすべてだ。ほんの小さなドラマだ。少女は大好きな絵本(もちろん『幸福の王子』だ)のラストを知りたいと願う。(彼女の持つ絵本は破れていて結末部分がなくなっている)そんなささやかな願いを巡るお話。
ふたつの小さなお話を連動させることによって1時間ほどの小さなお芝居はそこに幸福な時間を構築する。作、演出の森野めえは、原作の良さをそのまま生かしてこの小さなミュージカルのなかに落とし込む。5人のキャストは自在に様々な役を演じながらその世界を体現する。実に気持ちのいい時間だった。