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映画・演劇のレビュー

オリゴ党プロデュース『 バイオレット・フィズ.』

2021-12-13 10:23:59 | 演劇

2年ぶりに見るオリゴ党。昨年の公演は(ぼんやりしていて)見逃してしまったが、旗揚げからこの29年間、ほぼすべての作品を見てきている。岩橋さんの作り上げる不思議な世界が好きだ。いつもと少し違う、でもいつも通りの不思議な世界を今回も見せてくれる。岩橋ワールドは快調である。1本目は男性による二人芝居を、2本目は女性による3人芝居を、2本立てで展開していくのだが、この2本は微妙なところで重なり合う。タッチはまるで違うから別々の作品であるにも関わらず、キャラクターや、お話はリンクしていく。

男たちは売れない漫才師。岩橋さんによる軽妙な前説から地続きでそのままふたりが紹介され、登場して漫才を始まる。えっ?と思いつつもふたりの話術に誘い込まれる。しばらくして、もうそこでは芝居が始まっていることに気づく。漫才が終わり、彼らがダメ出しをしながら、お話の本編に突入するわけだが、芝居は故意にバランスを欠く。漫才のシーンが結構長く、そことその後の本編の部分があまり長さ的には変わらない印象を与える。漫才のネタである50年後の未来の話は本編で彼らが抱える現状とリンクしてく。未来に対する漠然とした不安という作品全体のテーマが浮上してくる。さらにはお話が終わったと思った後に再び漫才が始まる。それだけでここには彼らの日常という無限ループを感じさせることになる。

2話目は作家の女性と編集者のお話なのだが、作家には同居している女がいて、彼女が執筆の邪魔をしている、というお話が浮上してくる3人芝居。だけど、同居している女はもうひとりの自分で、やがてこれは多重人格の女の話だと、わかる。

微妙な匙加減でいろんな味に変化する2つのお話を並べることでそこに生じる不思議な感触を楽しむ。いずれも小さなお話だが、そこには、自分たちが今生きているその狭い世界(舞台となるのは近所の公園とか、自室とか)で、閉塞感を感じ藻掻いている姿がさらりとしたさりげなくタッチで提示されている。あっさりした芝居で後味もいい。


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