なんて優しい芝居なのだろう。多重人格の女性の心の痛みを、丁寧に描きながら、少しずつ彼女の痛みを和らげようとする医師たちの姿を同時に描く。作、演出のはせさんは最大限の優しさで彼女を包み込むように描いてみせる。
いつものはせさんの芝居とは距離の取り方が違う。バランスを明らかに崩している。はせさんは動揺している。彼女の痛みに心が揺れている。いつもなら素材に対して第三者の視点をしっかり取ることを前提にして芝居作りをするのに、今回はそれが出来ない。冷静な目で何事をも見ることを大切にしてきたはせさんが、敢えてそうはしないのだ。そして、それは出来ない相談なのだ。
彼女の心の内面をここまで視覚的に切り取って見せた以上、ここに客観性なんて持たすことは不可能。もちろん、いつものやり方は崩さない。しかし、主人公の女性の人格を4人も見せながら芝居を展開させた以上芝居が感情的になるのは必至だ。
彼女の中の別の人格が姿を現す時、役者が入れ替わっていく。最初全くストーリーを知らずに見ていたから、とまどったが、理解し始めると、その仕掛けが面白く芝居の中にどんどん引き込まれていく。はせさんは説明を排して見せるから、最初のシーンで主人公が自分の代行人格と話すところなんて、2人の関係が分からないまま見ることになる。しばらくは別の人格についても同じだ。彼女の中の4つの人格が4人の男女によって演じられる。
それをいつもの淡々とした描写で見せる。新しく生まれた人格が他の人格の持つ記憶を共有しないため、彼女は他の人格から話を聞きだし学習していく。さらには、他に人格を統合していくことや、本人さえ飲み込まれていくこと、そして彼女の姉の問題にまで話が広がり、内的葛藤がかなりドラマチックに描かれるが、芝居はそういうお話として引っ張らない。そういう問題さえ日々の中に埋もれるように描く。それは劇的なことではなく、医師にとっては日常であり、患者にとっては生活である。芝居はそんな視点を何よりも大切にする。
彼女の絶対的な孤独を、作者は優しさだけで包み込むしか術をもたない。それは、作者の敗北ではないことは、作品を見たら明らかである。彼はいつもの冷静さとは違うスタンスでこの作品を作り上げる覚悟を決めた。ただの甘い芝居ではない。はせさんはギリギリのところで作品を成立させている。
医師と患者との静かな日々が、淡々と描かれていく。ドラマチックな展開はない。毎日少しずつ前進していくように、患者と向き合い、いろんな手を尽くし、治癒に向かっていく。その地道な努力が彼らの仕事であり、患者である彼女は自分と闘いながら、自分自身を克服していく。
決して分かりやすい芝居ではない。重く厳しい芝居だ。しかし、こういう芝居こそたくさんの人に見てもらいたい。
いつものはせさんの芝居とは距離の取り方が違う。バランスを明らかに崩している。はせさんは動揺している。彼女の痛みに心が揺れている。いつもなら素材に対して第三者の視点をしっかり取ることを前提にして芝居作りをするのに、今回はそれが出来ない。冷静な目で何事をも見ることを大切にしてきたはせさんが、敢えてそうはしないのだ。そして、それは出来ない相談なのだ。
彼女の心の内面をここまで視覚的に切り取って見せた以上、ここに客観性なんて持たすことは不可能。もちろん、いつものやり方は崩さない。しかし、主人公の女性の人格を4人も見せながら芝居を展開させた以上芝居が感情的になるのは必至だ。
彼女の中の別の人格が姿を現す時、役者が入れ替わっていく。最初全くストーリーを知らずに見ていたから、とまどったが、理解し始めると、その仕掛けが面白く芝居の中にどんどん引き込まれていく。はせさんは説明を排して見せるから、最初のシーンで主人公が自分の代行人格と話すところなんて、2人の関係が分からないまま見ることになる。しばらくは別の人格についても同じだ。彼女の中の4つの人格が4人の男女によって演じられる。
それをいつもの淡々とした描写で見せる。新しく生まれた人格が他の人格の持つ記憶を共有しないため、彼女は他の人格から話を聞きだし学習していく。さらには、他に人格を統合していくことや、本人さえ飲み込まれていくこと、そして彼女の姉の問題にまで話が広がり、内的葛藤がかなりドラマチックに描かれるが、芝居はそういうお話として引っ張らない。そういう問題さえ日々の中に埋もれるように描く。それは劇的なことではなく、医師にとっては日常であり、患者にとっては生活である。芝居はそんな視点を何よりも大切にする。
彼女の絶対的な孤独を、作者は優しさだけで包み込むしか術をもたない。それは、作者の敗北ではないことは、作品を見たら明らかである。彼はいつもの冷静さとは違うスタンスでこの作品を作り上げる覚悟を決めた。ただの甘い芝居ではない。はせさんはギリギリのところで作品を成立させている。
医師と患者との静かな日々が、淡々と描かれていく。ドラマチックな展開はない。毎日少しずつ前進していくように、患者と向き合い、いろんな手を尽くし、治癒に向かっていく。その地道な努力が彼らの仕事であり、患者である彼女は自分と闘いながら、自分自身を克服していく。
決して分かりやすい芝居ではない。重く厳しい芝居だ。しかし、こういう芝居こそたくさんの人に見てもらいたい。