なんと3時間の映画だ。1931年のベルリンを舞台にして、ひとりの青年の魂の彷徨を描く。時代は不穏な空気に包まれ、やがてはナチスが台頭してくる。(2年後だ!)そんな時代に生きた20代の作家志望の青年ファビアンの日々を描く。そこで描かれるのは一応「恋と友情」か。彼が関わるふたりの男女とのお話が中心になる。女優志願の恋人。裕福な友人。ファビアンが彼らとの交流を通してどこに行き着くのか。もちろんこのふたりだけではない。彼を評価し、一緒に仕事をしようと何度も持ち掛ける有閑マダムもいる。(彼女がどうしてそこまで彼にこだわるのかはよくわからないけど)だけど、それらが彼をどう変えるのか変えないのか、そこから受けた影響がどう彼を動かすのか、その肝心のところがまるでわからない。
だいたいタイトルの『さよなら、ベルリン』というのがまず意味不明。さらにはサブタイトルに「またはファビアンの選択について」とあるのだが、こちらもなんだかなぁ、と思う。彼は流されているだけで何も選択していないし、(あのラストを選択というのなら、笑うしかない)ベルリンから離れるけどそこにも特別な感慨はない。傷心のまま帰郷して両親と過ごす。で?と思う。
だらだら3時間、彼とその周囲の人たちの姿を描きながらも、それがどこに行きつくのか、それに何の意味があるのかも不明。エーリヒ・ケストナーの唯一の大人向けの傑作小説の映画化らしいのだが、原作は面白いのだろうか。映画のほうは焦点がぼやけていてこれでは何も伝わらないのだけど。しかも、まさかのラストのあっけなさ。あれで終わるのか、と唖然とするしかない。ということで、僕の感想はこんな感じで実に短い。