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映画・演劇のレビュー

『総理の夫』

2021-10-07 10:38:25 | 映画

実にタイムリーな企画だと思ったけど、映画はあまりお客が入っていないようだ。残念。総裁選、女性総理の可能性とか、そういうものに大衆は興味ないのだろうか。まぁ、どうでもいいけど。そんなことより原田マハのこの軽い小説が映画化されたことを喜びたい。ずっと前に原作を読んだ時からこういうのが映画になると面白いな、と思っていたので映画化決定の報を聞いて、楽しみにしていた。監督は河合隼人なのでちょっとドキドキしたけど、嘘くさいという評判を聞いて、さらに期待が高まった。(今のこの国で女性総理なんか、生まれるはずはないからね。)

さて、この映画である、予想通りの映画でなかなかよかった。これは社会派ではなく、コメディ映画なのである。そんなこと、見る前からわかりきっている。原作だってコミック感覚の作品だったのだ。こういう甘い作り方が適切であろう。それはないわぁ、と笑いながら見ていくうちに、でも、もしこんなことがこの国で起きたなら素敵だな、と思う。それだけで国民(!)の意識は変わる、と思いたい。女性だから、ではなく人間として、この国を生きやすい国にしたいと、ちゃんと志のある政治家が思ってくれ、そんな人が総理になってくれたならいい。そんな時代がいつか来たら日本は素敵な国家となる、だろう、と信じたい。

子供ができたから総理を辞任する、という無責任な展開を受け入れられないというバカな人がいるらしい。ちゃんと映画を見た方がいい。これは切迫流産の危機に直面してそれでも仕事を優先させようとする妻を守ろうとする夫の話である。日本の未来と家族の未来とを天秤にかけたわけではない。だいたいそのふたつを天秤にかけるなら当然家族を優先させるべきだ。しかも、彼女の作った政党には彼女と志を同じにする仲間がいる。ひとりのカリスマが政治を変えるのではなく、みんなで戦うというのが彼女の姿勢だ。だから彼女が総理を辞任しても大丈夫なのである。ちゃんと子供を産み、育てること。その後、再び総理に復帰する、という選択をちゃんと受け入れる世界であって欲しい、というのがこの映画の想いだ。

甘いコメディ映画である。きれいごとの理想が描かれる。でも、それが出来るのが映画なのだ。シリアスな映画とは違うアプローチをしているこの映画を僕は支持する。もちろん映画としての完成度はあまり高くはないけど、それはまた別のお話だ。


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