習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『NANA2』

2006-12-28 19:56:32 | 映画
前作から2年、かなりのハンディーを抱えての第二作となったが、作品の出来は前作を遥かに凌ぐ。だが、劇場はガラガラだった。あれだけの大ヒットなのにブームが去るのは速い。驚くべき無関心。冬休みのナビオで2,30人しか客が入っていないなんて。

 主人公の奈々が宮崎あおいから市川由衣に代わったのは致命的だった。シリーズもので2作しかないのに主役が別人になるなんて、これでは苦しい。映画としての説得力がない。しかも、この映画は宮崎あおいのキャラクターが一番のポイントで、彼女がいるから中島美香のナナが生きる、という構造になっているのだ。天然の奈々という女の子が、東京に出てきて、どう生きていくか。そこを軸に周囲に人物が絡み、生きてくる。彼女がいなくてはドラマ自体が成立しない。

 市川由衣は実によくやっている。涙ぐましいばかりの奮闘である。映画がよく出来ているだけにこれが宮崎なら、と何度も思ったが、そんなことを考えても詮無いことなので、あきらめる。市川が余りに普通の女の子過ぎて彼女にみんながのめりこむ気持ちが分からなくなるのが辛い。なぜ、彼女でなければいけないのか、そこに説得力がなくては映画は成立しない。二人の男がなんの変哲もない彼女を好きになり、彼女に本気になる。彼女は自分のようななんの取り得もなく、仕事も首になり、バイト暮らしをしてる女に、どうしてみんなが構うのか分からない。

 ナナが言う。「ハチ公(奈々のことだ)がいるからみんなの気持ちが一つになるんだ」と。普通であることの魅力。音楽の世界に身を置き、スターへの道を歩み始めるナナにとって奈々はバランスシートの役割を果たす。ミュージシャンである前に、一人の人間であるという当たり前の事を奈々は教えてくれる。だから、誰よりも大切なのだ。なのに、彼女を失いそうになる。泣いていたのは奈々だったはずなのに、気付くとナナまで泣いてる。弱い心を持ち人は生きている。だから、誰かに支えてもらいたい。ナナと奈々の物語の魅力はそこに尽きる。

 大谷健太郎監督は、前作でこういうメジャー映画に始めて取り組み、虚構の話の中で2人の少女の存在だけは嘘がないように丁寧に見せてくれた。映画としては、今いちの出来だったが共感できる作品だった。今年『ラフ』を経て再びこの作品に取り組み、以前よりずっと自信を持ち作品作りが出来ている。

 女の子の弱さ(それは男の子も同じだが)をしっかり描き、だから人は支えあい生きていくのだと、声を高らかに描く。こんなにも気持ちのいい映画に仕上がったのを嬉しく思う。そりゃぁ、宮崎あおいなら奈々をもっと魅力的に見せることは可能だ。しかし、それを補って余りある演出で見せることに成功した。


 余談だが、この夏公開された『東京フレンズ』という映画のストーリーラインがこの映画に酷似していないか?出来は最悪だが、こんなによく似た映画を同時期に公開していいのか。まぁ偶然似ただけだろうが。それにしても大塚愛は可哀想。もっといい映画に出れたらよかったのにね。

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