大泉洋主演、北海道の自然を舞台にし、食を題材にしたシリーズの第3弾だ。前2作『しあわせのパン』『ぶどうのなみだ』の三島由紀子監督(最近絶好調だ。『幼な子われらに生まれ』『Red』と傑作を連打中!)からバトンタッチされたのは『神様のカルテ』シリーズの深川栄洋。器用な彼なら信用できる、と思ったのだが、これが、なぜか、つまらない。あれだけ快進撃を続けた深川監督は今、ちょっとスランプ気味だ。そう言えば、最近新作がない。2019年のこの映画が、実は最新作。(『神様のカルテ2』以降精彩を欠く)
パン、ワイン、と続いて今回はチーズなのだけど、主人公の想いが伝わりきらない。こいつはほんとうにおいしいチーズを作りたいと思っているのか、と突っ込みたくなるとくらいに。なぜ、こんな曖昧なことになったのか。妻への想いや子供への想いも同じ。仲間たちとの暮らしが嘘くさいのも気になる。やっていることが、なんだかママゴトみたいなのだ。前2作では、そんなこと思わなかったのに、なぜだろうか。
食に対するこだわりが伝わらないのが大きい。確かにおいしそうな食事は目を楽しませてはくれる。だけど、それが映画としては機能しない。だから、表層的なものでしかない。きれいごとにしかならないのだ。ラストのタイトルである「そらのレストラン」のシーンもその祝祭的空間が映画全体の中心として機能しない。
確かな生活が描かれていないから、嘘くさい。全体はメルヘンでいいのだ。前2作だってそうだった。だけど、それだけではまずい。そこにリアリティのある「ここで生きている」という熱い想いがなくてはこのシリーズは成立しない。それにしてもそんなこと、深川監督なら十分に分かっているはずなのに、どうしてこんなことになったのか、不思議だ。