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映画・演劇のレビュー

青山真治『帰り道が消えた』

2010-05-17 20:41:02 | その他
 映画監督の青山真治が書く小説は、彼の作る映画とはまるでイメージが違う。その落差が面白いといえば、面白いのだが、あまりの違いになんだか不思議な気分になる。

 特に彼の小説オリジナルは、映画にはなりそうもないものが多い。今回もそうだ。まぁ、映画向きの素材なら最初から映画にするのだろう。
 
 作品世界が閉じているし、狭い。その狭さの中で呻吟する女たちが描かれる。今回は3人の女たちが主人公だ。3話からなる独立した短編集を思わせて、3話目でちゃんとつながるという仕掛けだ。倒錯的な夫のセックスを受け入れる妻。幼なじみの恋人を横取りする親友。歳の離れた妻子持ちの中年男と不倫する女。なんとも不毛な関係性ばかりが描かれていく。そこには出口なんかない。

 そんな3人の女たちがともにたどりつく場所は、ダムの底に失われた村だ。帰るところなんかもうない。だが、死ぬわけにはいかない。まだまだ人生は続く。

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