『攻殻機動隊』が実写で映画化される。しかもハリウッド映画として。もうそれだけでどれだけ興奮させられたか。ヒロインの草薙素子をスカーレット・ヨハンソンが演じる。予告編も期待させるビジュアルで、脳内の期待度はどんどん高まるばかり。しかも、荒巻をビートたけしが演じる。いったいどうなるのか、予想もつかない。
だけど、不安もあった。監督があの『スノーホワイト』の人だという。あれはへぼい。期待は急速に萎む。きっと無理。
映画を見終えてため息をつく。しばらく映画はもういい、と。そこまで思わせるくらいにがっかりした。今の時代にこんな中途半端な映画を作るなんて、そんな無神経は許せない。確かにビジュアルはすばらしい。でも、それだけでは映画にならない。仏作って魂入れず、とはこの映画のためにある言葉ではないか。こんなことになるのなら最初から実写映画が苦手な押井守に監督させたらよかったのではないか。同じ失敗であろうとも、まだ許せる失敗をしてくれるはずだ。
数々の作品を生み出した『攻殻機動隊』の歴史に汚点を残す作品になった。義体という設定だけでも面白い映画になるはずなのだ。なのにここには何のお話も用意されてはいない。世界観が生かせないだけではなく、原作のアウトラインしか踏襲できてない。悲惨だ。
原点になった押井守監督の傑作のセルフリメイクが妥当な線で、それができないハリウッド映画界はこういう企画に手を出すべきではない。
なぜかひとりだけ日本語で話すビートたけしが、クレジットでは「ビートタケシ・キタノ」となっていて、そこは受けた。桃井かおりが素子の母親役で(彼女は英語を話す)おおっ、と思った。それくらい。