この春中学3年になる女の子が主人公。親友が転校してしまい、孤独になる。クラスにはひとりだけ話ができる子はいるけど親友の代わりにはならない。親友とは今も文通をして繋がってはいる。メールではなく、手紙。それがいいと親友が言ったから。だけど、彼女から届く手紙はいつもそっけなく、イラストと1、2行だけ。それでは物足りない。手紙が来たらすぐに返事を書くが、相手からは2週間くらい間が空く。自分ほど親友は自分を必要としていない、のか。少し寂しい。
離れていると、不安になる。一緒のいたときはあんなに仲良くしていたのに、だから寂しくて。やがて、高校受験が迫ってくる。同じ高校か、大学に行きたいね、って言ってたけど彼女は美術系の学校を目指すという。文通を通してつながるのではなく、距離を知る。お互いの気持ちを伝え合うのは難しい。もどかしい。相手の気持ちが見えないから。
とても微妙な想いをさらりとしたタッチで綴る小説だ。その距離感がなかなかいい。これは児童文学だけど、大人の感触でさりげなく綴られていく。小説自体もなんだかそっけない。でも、そこにお互いの気持ちがしっかりと刻み込まれる。