アキ・カウリスマキ監督の新作である。ポスターがとても気に行った。もちろんそんなことは関係なく彼の新作が公開されたなら、内容も知らずとも、まず見に行く。彼が『真夜中の虹』で彗星のように日本デビューしてから、どれだけの歳月が過ぎたことだろう。あの衝撃は今でも忘れることはできない。何も語らない。極限にまで削ぎ落とした簡潔な文体。なのに、圧倒的なインパクト。たった75分の映画なのに、その豊穣なイメージの洪水に溺れさせられた。でも、しっかりとさりげないし。そっけない。説明はない。せりふもない。ほとんど。必要最小限。ありえない映画だった。森田芳光ですら霞んでしまう。そんな凄い才能の登場。それがアキ・カウリスマキだったのだ。
しかし、近年の彼はなんだかまるくなった。『浮き雲』くらいから、セルフパロディーのようになり、やがては、普通の映画監督になる。今回の作品なんか、ありえない。こんな人情劇を彼が撮る。しかも、毒気はどこにもない。アフリカからの難民である少年を助ける靴みがきのオヤジとその仲間たちによるハートウォーミングだ。密航してきた彼を無事にロンドンの母親のもとに届けるためにみんなが奮闘する話だ。
どこにも、なんのひねりもない。まるでチャップリンの映画でも見ている気分だ。(相変わらずセリフはほとんどないし) 心温まるお話が嫌だ、とかいうのではない。ここには悪い人は、一切出てこない。善意の塊だ。貧しいけれどささやかに、小さな幸せを守り、つつましく生きている。困っている人を見過ごすことは出来ない。
見終えてほっとさせられる映画だ。嫌いなわけがない。だが、こんなカウリスマキを見るに忍びない。
しかし、近年の彼はなんだかまるくなった。『浮き雲』くらいから、セルフパロディーのようになり、やがては、普通の映画監督になる。今回の作品なんか、ありえない。こんな人情劇を彼が撮る。しかも、毒気はどこにもない。アフリカからの難民である少年を助ける靴みがきのオヤジとその仲間たちによるハートウォーミングだ。密航してきた彼を無事にロンドンの母親のもとに届けるためにみんなが奮闘する話だ。
どこにも、なんのひねりもない。まるでチャップリンの映画でも見ている気分だ。(相変わらずセリフはほとんどないし) 心温まるお話が嫌だ、とかいうのではない。ここには悪い人は、一切出てこない。善意の塊だ。貧しいけれどささやかに、小さな幸せを守り、つつましく生きている。困っている人を見過ごすことは出来ない。
見終えてほっとさせられる映画だ。嫌いなわけがない。だが、こんなカウリスマキを見るに忍びない。