フランスとドイツの境にあるロレーヌ地方の低所得者層向け団地に暮らす10歳の少年、ジョニーが主人公。両親の離婚から母と暮らすことになる。幼い妹の面倒を見る。自分のことしかしない兄がいるがあてにならない。
長く伸ばした髪は彼を女の子のように見せる。そんな彼の日々を淡々と描いた映画。内気で、自分から何も出来ない彼を担任の先生が目をかけてくれる。彼は先生が好きになる。そこまでならよくあるパターンだが、だけど先生は男性で、ジョニーは大胆にも先生を誘い、セックスを求める。まさかの同性愛の話だったのか、と驚く。彼は自分がゲイであることを自覚している。そこには不安やためらいはない。自らの性状を冷静に受け止める。
それだけではなく、大人と対等に渡り合うし、冷静な判断もできる。そんな10歳児って、信じられない。やがて彼は現状を踏まえてここから抜け出し自分の人生を作り上げるためのスタートを切る。寄宿制の私学中学に入り、新しい人生を生きるのだ。先日見た『コット はじまりの夏』の8歳児コットは立派で素敵だったが、この映画のジョニーも凄い少年なのだ。子どもだからと侮れない。
監督はサミュエル・セイス。2021年フランス映画。こんな映画が密かにある。配信恐るべし。