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映画・演劇のレビュー

『バイプレイヤーズ』

2021-04-19 18:02:12 | 映画

TVは時々見ていたけど、それほど熱心なほうではない。あまり面白いとは思わなかった。楽屋落ちみたいで、乗れない。だから、この映画も見る気はなかったのだが、たまたま時間調整で上手くはまったので、見たのだけど、実に面白い作品に仕上がっていて満足した。これだけの俳優をよくぞ集めたものだ。日本中の役者たちを総動員した。個性的で、どの映画でも見る有名なバイプレイヤーたちが一斉に顔をそろえている。全員実名で出ている。自分を演じている。

そこに主役級の役者たちがバイプレイヤーとして多数絡んでくる。楽しくて遊び心満載の豪華な映画である。でも、それだけではない。この映画を見ながら一番感じたことは、彼らが演じることを心から楽しんでいることだ。それがあるから、この映画はこんなにも輝いて見える。

これはただのお遊び映画ではない。撮影所が舞台になる。スタジオはフル稼働している。だけど、撮影されているのはすべてTVドラマばかり。映画ではない。だけど、役者たちは生き生きしている。みんな楽しそうだ。そんな中、濱田岳は少人数のスタッフ兼キャストで自主映画を作っている。彼らが作るささやかな映画にやがてみんなが協力していくことになる。お話自体は実にたわいない。でも、それでいいし、それがいい。これはある種の寓話だ。リアル役者が自分を演じながら、みんなが同じような想いを抱えて生きてる、その想いがしっかり描かれる。

この映画が素敵なのは、先にも書いたけど、映画(もちろんドラマも、である。演じることが好きなのだ。)との一期一会を楽しみながら日々を暮らしている役者たちという「生き物」が生き生きしているという、ただそれだけのことがしっかりと描かれているからだ。自分の好きなことをして生きている。しんどいこともあるだろうけど(というか、映画を作るってほんとうに大変なことだ)、それ以上に楽しいことがある。だからやめられない。そんな気分が伝わってくる。役者っていいな、と思った。いや、役者が、ではなく、好きっていいな、ということだ。この優しい映画を見てそんなことを思った。


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